第208話 山の頂上へ

その後は特に何事もなく、山の麓近くまで到達した俺達が見たものは、

「さぁさ、寄ってらっしゃい!カルヴァのピリ辛焼きだよ!」

「こっちは飲み物各種売ってますよ!喉が渇いた方は、是非ウチへ!」

「記念にネックレスや指輪はいかがっすか!?おっ毎度あり!彼女さんへの

プレゼントかい?かぁ~、羨ましいねぇ!」

立ち並ぶ屋台、それにそこで色々な物を売っている、やたらと厳いかついエルフ。


「エルフって、あんなだったか……?」

なにしろ、そこにいるエルフは老若男女問わず、全員が筋肉の鎧を装備していて、

やたら人当たりがよい。

元の世界でのエルフのイメージといったら、森の中に暮らしていて、生臭い物は

一切食べず、華奢きゃしゃで、他種族を好まない……そんな感じだったんだが。

いや、確かここ・・では、肉を食べないのはごく少数だったか。

だが、それ以外がイメージと全く合わない。


「そだよ。ここの人達はいつもこんな感じだし。」

「そうなのか……唯一、俺の考えと合っているのは、見た目だけか。」

ムキムキではあるんだが、顔だけ見ると眉目秀麗という四字熟語は、この種族の

ために作られたんじゃないかと思うくらいに整っていたが、それが体と

ミスマッチ過ぎて、頭が混乱してくる。


「何考えてたの?」

フィルから尋ねられたので、先ほどのイメージを話す。

「ん~、近いのは保守派のエルフかな?」

「保守派?」

「うん。今も森に棲んでるんだけど、なんか兄ちゃんの言うほど高貴って

感じでもないんだけどね。」

やはり実際の異世界に来てみると、大分違う物なんだな。


「それで、ここは何やってるのかしら~?」

「お祭りなんですか?」

そうだな、俺も気になった。


「違うわよ。ここはいつもこうやって騒いでるわ。」

「どうしてである?」

「シルフ様が賑やかな方が好きな方だからよ。で、風の精霊王の恩恵を受けている

エルフ達が露店を並べて、お祭り騒ぎをしてるのよ。」

観光客だろうか?結構な人数が集まって飲み食いや、物を買ったりしている。


「毎日こんな調子なのか。さすがに疲れるな。」

「でも、活気があっていいである。」

そうとも取れるな。まぁここは俺達には関係ないし、さっさと行くとするか。


そうして露店を抜けて行き、山を登り始める。

「人が多いな。」

「この山は空気も綺麗だし、高さもあまりなくって登りやすいから、リハビリとか

鍛錬で人気の山なんだ。」

周りを見ると、老人も多くいたので、フィルが言っていた意味が分かる。

急こう配でもないし、散策するには最適だろう。

が、中腹に辿り着くと、さすがに様子が違ってくる。


「頂上に行くには、ちょっと厳しくなるんだよね。」

そこには階段が整備されていたが、さすがに多かった。

「これ、何段あるのかしら~……?」

「確か……一万?」

面倒くさい……

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