第207話 町を出て

「へっくしゅ!」

「風邪ですか?確かに急激に気温が変わりましたからね。」

「いや、違うとは思うが、何か寒気が……」

アイスエイプを倒した翌日、俺達はウィストの町の食堂で朝食を取っていた。


「あの……」

「ん?あぁ。」

食べ終わった頃、そこにやって来たのは水精霊の家族だった。


「貴方達ですよね?助けて頂いたのは。」

「この度は本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」

「大した事じゃない。」

「でも……」

「気にするな。」

俺のそのセリフに、何故か恐縮するような態度を取る水精霊達。

「あんまり気にしなくていいわよ。コイツ、ぶっきらぼうなだけだから。本当は

お礼言われて、ちょっと照れてるのよね~、ジュ・グ・ニャ・ちゃん♪」




「……」

久々にコップに閉じ込めてみて数分、詐欺師は動かなくなった。


ったか?」

ってないわよ!」

起き上がって叫ぶあたり、まだ体力が残っていたか。しばらく、これは

やってなかったから、手加減しすぎたかもしれん。


「え……?いつもこんな感じだったの?」

「時々、やってたである。」

フィルが引いてる気がするが、理由が分からんな。

「いや、分かるでしょ。」

「……たまに俺の考えを読むのはやめろ。」

「アンタ、顔に出すぎなのよ。」


俺達が話していると、スターナが所在なさげにしていた水精霊達に喋りかけた。

「そっちも、もう平気なの?」

「えぇ、おかげさまで。」

「これからどうするのかしら~?」

「それに関しては、少しここから離れようと思います。」


そのセリフを残念そうに言う水精霊だったが、家族が死にかける目に遭った

場所に長居はしたくないだろう。

「そうか。」

「はい。今度は仲間が多く集まるような場所で暮らしていこうかと。」

「それがいいかもしれませんね。」


それから食堂を出て、そのまま町を出る事を告げた。

「私達は魔法屋の方にもお礼を言いに行こうと思うので、これでお別れですね。」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん達、ありがとう……」

「またね……」

子供二人は引っ込み思案らしく、母親の後ろに隠れていたが、それでも

何とか勇気を振り絞り、礼を言ってきた。


「またである。」

「うん、またね。」

そのまま町を出る時に、見えなくなるまで手を振ってきた。





「これで、やっと次の目的地に進めるな。」

「あと二日ほどだったである?」

「そだね。ここから見えてる、あの山だよ。」

遠くの方に、そこまで高くはない山が薄ぼんやりと見える。


「今度は、特に何事もなく会えたらいいんだけどね。」

「イフリートの時は面倒くさい事、この上なかったからな。」

今度こそ、話がスムーズに進むのを期待して、俺達は山へと向かった。

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