第200話 ウィストの町

「ここがウィストの町ですか。」

「そうニャ。」

「んじゃ、あたい達はこれでお別れだね。」

「本当にありがとうね~。」

サーカス団の馬車に送ってもらって、二日後に次の町であるウィストの

前に着いた。


「ふむ、名残惜しいが仕方ない。君達には君達のやるべき事があるのだろう。

幸運を祈っているよ。」

「……さよなら。」

団長は相変わらず渋く見送ってくれた。ケンタウロスは無口でほとんど

話す機会もなかったが、別れの挨拶くらいはと思ったのか、一言発してくれた。

本当に一言だったが。


それから馬車が見えなくなるまで立ち尽くしていたが、寒かったので

さっさと村に入って宿を訪ねた。

「え~、六名様ですね。部屋はいくつになさいますか?」

「三部屋で頼む。」

「はい、承りました。では、こちらを。」

そうして、部屋の鍵を渡された。


「質問があるんだが。」

「はい、なんでございましょう?」

「この寒さについてなんだが、ここら辺はこんな寒いものなのか?」

「いや~、そんな事はないんですが、十日ほど前に急に寒くなって、いまだに

原因が分からないんですよ……」

どうやら、この寒さはやはり異常らしい。宿もだが、他の店も客が少なくなった

とぼやいていた。


とりあえず部屋に行って、荷物を置く。

「部屋の中も少し寒いであるね。」

「このくらいは我慢するしかないか。」

あのサーカス団の馬車は団長のケルベロスのおかげで暖かかったんだがな。

ケルベロスという人種は、火の精霊王の恩恵を受けているらしく、いるだけで

周りに熱をある程度は自由に分ける事ができるそうだ。実際に馬車の中は

暖房でも効かせたかのように快適だったんだが……


そうしていてもしょうがないので、全員で村に買い出しに行く事になった。

買うのはもちろん防寒着だ。運のいい事に、この町はある程度の大きさがあり、

服の品揃えも中々だった。

「きゃ~!これ可愛い~!」

「サーシャちゃん、こんなのはどうかしら~?」

「スカートはスース―して落ち着かないである。」

「私、鎧だから着れる物が……」

「それ言ったら、ボクは全身鎧なんだけど……」

なぜか悲喜こもごもといった感じの会話がなされて、女性陣が楽しそうに買い物を

している。いつも替えの服と交互に着ても文句を言わないのに、何故こんなに

はしゃいでるんだろうか?


「さっさと選んだらどうだ?」

「もうちょっと待ちなさいよ。」

「そんなに変わらないだろ。」

「あ、そういう事言う!?アンタにも選んであげようかと思ったけど、やっぱり自分で

選びなさい!」

最初からそうするつもりだったが、他も詐欺師の方に味方するみたいで、俺が

総スカンを食らった。


「女性の買い物は長いと申しますし。」

「だが、服を見るだけで二時間はかかり過ぎだろ。」

話しかけてきたのは服屋の店主だ。


「しかし、冬物の服なんてよくあったな。」

「在庫を無理やり引っ張り出してきましたよ。まさか、この時期に在庫処分する事に

なるとは思いませんでしたが。」

「そうだろうな。」

「そういえば魔法屋を営んでいる弟が、水精霊の家族に気になる事を聞いたと

言ってましたね。」

魔法屋?


「その魔法屋っていうのは?」

「精霊の空腹を満たすために、魔法をかけるお店ですよ。」

あぁ、あの違和感しかない店か。


「どうも、この近辺が寒くなる前に自分たちが住んでるところが急に寒くなってきたと言っていたと。」

その話を聞いて、俺は少し考え事をしながら、わいわい騒ぎながら服を選んでるのを

眺めていた。

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