第199話 異常気象

「もう、行かれるんですか?」

宿を出ようとすると、女将と出会った。

「あぁ、世話になった。」

「とんでもない。そういえば次は、シルフ様のところに伺うとか?」

「そうである。」

場所については、従業員にもう聞いている。

ここから七日ほど行ったところにある、山の頂上にある洞穴で【風精霊の吐息】

だったか?それを使えば会えるかもという事だ。


「では、またのお越しを。」

「……どうだろうな。」

できれば、今度こそ普通の温泉宿に泊まりたい。



ネスノから出発してしばらく……

「平穏だ……」

しんみりと今の状況に浸っていた。

温泉は確かに嬉しかった。それだけなら言う事なんて、何もないはずだったのに!

こうやって旅をしている方が気が休まるって思う日が来るとはな……


「どうしたんですか?」

「! な、何でもない。」

「?」

というか、昨日の一件を忘れているのは助かるが、俺の方は覚えている訳で、

気まずいというか、何というか……

スターナと詐欺師がこっちを見ながら、ニヤニヤしているような気がするが、

気のせいにしておこう。


そうして、次の目的地までは特に問題なく行けるかと思っていた。が、三日目。

「寒すぎない?」

「そ、そうですね。」

「フィルちゃん、この辺って異常気象でも起こってるの?」

「い、いや、ボクもこんなの初めて――へくちっ!」

なぜか冬になったかと思うくらい、急に寒くなった。


「みんな、大丈夫である?」

「サーシャは平気なのか?」

「このくらいなら、まだ大丈夫である。」

あれだけ暑いのは苦手そうだったのに、寒いのは平気らしい。

このまま、歩いても野宿する事が難しいと感じたので、町に引き返すかどうか

考えた時、通り過ぎようとしていた馬車が止まった。



「あんたら、大丈夫?」

「大丈夫よ、助かったわ~。」

その馬車はケンタウロスが引き、中には下半身が蛇のラミアと呼ばれる人種と

ワーキャット、首が三つのケルベロスがいた。


「悪いな。」

「何、困った時はお互い様ってなもんさね。」

「ところで、貴方達は?」

「ウチらは旅のサーカス団ニャ!」

ワーキャットが張り切ってそう答えるが、

「「「「サーカス団……」」」」

俺、脳筋、詐欺師、サーシャがげんなりと答える。


「え、ちょちょ!サーカス団って聞いたら、もっとこう……凄いにゃ~!とか

にゃにか見せてください!とかってなるもんじゃないのかニャ!?」

「いや、普通はそうかもしれないんだけど……」

「なんか変な事するかもしれですし……」

「サーカス団にどんな偏見持ってるニャ!?」

偏見と言われてもな……あの雨を降らせたヤツらの事しか思い浮かばんから何とも。


「まぁまぁ、落ち着きなよ。アンタら、どこまで行くんだい?」

「シルフのいるっていう山までだな。」

「残念ながら、あたい達はそこまで行かないねぇ。でもま、途中の町か村までなら

送ってやるよ。いいよね、団長?」

言われたケルベロスが頭を起こして答える。


「何、構わんよ。同じ道を行く者同士、短い間だが共に進もう。」

……ケルベロスが団長か。性格と声が尋常じゃなく渋いな。

「本当に?助かるよ、ありがとう!」

そうして俺達は、近くの町まで送ってもらう事になった。

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