第191話 精霊王は思ったより人間に近い

「あ~……聞き間違いか?」

「……残念ながら、違うと思います。」

コイツ、今なんて言った?シルフちゃん・・・とデート?


《が、がっつき過ぎては嫌われるからな。は、初めはデ、デ、デデデートくらい、

そそそう、そのくらいでどうであろうか!》

「どうであろうかと言われましても……兄ちゃん、どうする?」

「正直、どうでもいい。」

というか、そんなもん自分でやれよ。

精霊王だの言われてるし、最初に出てきた時も威厳があったから凄いヤツかと

思っていたが、ずい分と俗っぽいな。


《もしも夢が叶ったら、力を貸すのもやぶさかではない。いや、デートできると

なったら、全力を出すとも!町の一つや二つ、消滅するほどの火力をだして

やろうではないか!》

「いらねぇよ。」

なんだろうか、このよく分からない空気は?


「勇者ちゃん、どうするの?」

「……あまり受けたくはないが。」

「受けるしかないわよね、やっぱり。」

さっきの会話で他に加工できるヤツもいないって言っていたしな。


「ところで、なんで神鉱石を知ってるんだ?」

《む?それは前の勇者と呼ばれる者と、その仲間の武具を作る時に、

我も手伝ったしな。》

「「「「「え!?」」」」」

「なるほどな。」

確かに、それなら知ってるのも納得だ。


「それで、俺を見たのか。」

《そういう訳ではないが?》

「?じゃあ、なん《そんな事より、返答やいかに!?》……分かった、受けてやる。」

俺の言葉を聞いた途端、拳を天に突き上げて、

《いよっしゃああああぁぁぁぁぁ!》

叫んだ。


「いや、失敗する可能性もあるんだが……」

《そこは何とかせい!》

……もう、神鉱石とかどうでもいいから、魔法をぶっ放して帰ろうか?

「デュグア、止めときなさい。」

「何がだ?」

「アンタ、物騒な事を考えてる時の顔になってるわよ。」

考えたくもなるだろ、普通。


「まぁ取りあえず、次はシルフ様に会いに行けばいいんですよね?」

「また、洞窟の中を歩いて帰るであるか……」

サーシャがうんざりとしている。あの暑さが相当苦手なようだ。


《何故だ?》

イフリートがよく分からない質問をしてきた。

「何故とは?」

《だから何故、洞窟を歩いて帰る必要があるのかと聞いている。》

「他に方法が無いだろ。」

《あるが?》

あるのかよ!


《ほれ、奥の方に扉が見えるであろう?そこの階段を上がれば、外に

出られるぞ?》

ここに来るまでの苦労は一体……


「それを知ってればドラゴンと戦う事も無かったのに……」

《ドラゴン……ブランジオか?》

「知ってるのか?」

《なに、我が相談するために呼び出したのだから当然と言える。》

「……ちなみに相談内容は何だ?」

《決まっておる!シ、シルフちゃんの事……ぐはぁ、恥ずかしい!》

イフリートは両手で顔を覆って悶えている。コイツの恋愛相談に乗ったせいで、

俺達は下手すると死にかけたし、ドラゴンは死んだと思うと、やるせない。


「……デュグア、さっきは止めたけど私が許可するわ。やっちゃいなさい。」

「水よ。深き生命の源よ。我が前に立ちふさがりし愚かな魂を

貫き滅ぼしたまえ……アイススピアー!」

《ギャアアアァァァァァァッ!》

イフリートに氷が突き刺さると、体が薄くなり、消えてしまった。


「やったか?」

「いや、精霊王はあくまで、この世界に姿を作り出してるだけだから、死ぬ事は

無いはずだよ。」

「チッ……」

止めを刺せなかった事を残念に思いながら、さっきの説明にあった扉へと

近付いて行った。

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