第190話 イフリートと交渉

「イフリート様、突然呼び出してしまい、申し訳ありません。」

フィルが頭を下げて謝罪する。

《構わぬ、用件を言うがよい。》

ドラゴンよりも、よっぽど話が通じそうだ。


「実は鉱石を加工するために、お力をお借りしたいのです。」

《ドワーフがそれを言うのか?なれば、その鉱石はよほどの物なのであろうな。》

「その通りです。非常に硬く、温度変化にも強いため、私共では無理なのです。」

「私共……んふっ!」

詐欺師がフィルの丁寧な言葉遣いに笑いそうになったので、握って黙らせる。


《して、その鉱石の実物などはないのか?》

「申し訳ありません、欠片も削れませんで……神鉱石と言う《何だと!?》」

イフリートが驚いている。何があった?


「ど、どうされたのですか?」

《神鉱石、か……》

そして辺りを見回して、俺の方に目を合わせる。


《なるほど……その者がいるのであれば、入手できる事もあるやもしれんな。

事情は分かった。》

「では!」

《その話は断る。》

今の流れだと、やってくれそうな雰囲気が出ていたんだが?


「なんでですか!?」

《神鉱石の加工に力を使うのは骨が折れてな。確かに精霊王である我にしか

出来ぬであろうが、そこまでしてやる義理もなし。》

つまり、そこまでお前らの世話を見てやる理由が無いって事か。


「なら、何か困ってはいないか?」

《ぬ?》

「手助けしたいと思わせればいいんだろ?だったら、困り事があるなら

解決してやる。その代わり、俺達の手伝いをしてくれ。」

「ちょ、ちょ、ちょっと!そんな口の利き方しちゃダメだって!」

フィルが慌てて止めるが、イフリートの方は特に問題にしていないらしい。

むしろ俺の言葉を聞いて、考え事をしている。


《何でも、いいのか?》

「できる範囲でならな。」

提案してみただけだったが、功を奏した。何か頼みたい事があるらしい。


《むぅ、だが、しかしな……》

「言うだけ言ってみたらどうだ?そうしないと俺達もできるかどうか分からん。」

《そ、そうよな。》

そんなに言いづらいのは、相当重要な問題だからだろうか?

安請け合いしない方が良かったか?いや、どちらにしろ神鉱石が加工できるのは

コイツだけだし、多少の手間は承知でやるしかないな。


《ぬ、主ら、最大限の努力をする事を誓えよ?》

「あぁ。」

《本当、本当だからな!?》

……何かキャラも変わってないかコイツ。


《シ、シルフ……》

「シルフ?」

誰だか分からなかったので、フィルの方を向くと、察したのか説明してくれた。

「イフリート様と同じ精霊王の一人で、風を司るお方だよ。」

なるほど。


「で、そのシルフっていうヤツに用があるのか。」

《そ、そう……》

「内容は?」

《内容はだな、そのな……》

さっきから、ウジウジし過ぎて鬱陶しいな。


「早く言え。」

《シ、シ、シルフちゃんとデートがしたいのだ!!!!》

……しばらく誰も口を開かず、よく分からない空気が流れた。

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