第189話 いざ、最奥へ

俺達は洞窟の奥へと進んでいく。

「もうすぐね~。」

「いや、ホント死ぬかと思ったわよ。」

「ボクも。」

さっきのドラゴンと戦ったせいで、精神的にキたのか、全員が疲労困憊と

いった感じだ。

俺もまさかドラゴン、しかも俺を殺したのと同じような強さのヤツと

戦うハメになるとは思いもしなかった。


あ、しまった。

片を付ける前に、俺を殺したドラゴンについて、知っている事を吐かせるべき

だったか?だが、憎き宿敵とか言ってたし、プライドも高かったから、素直に

喋らなかったかもしれないし、何より終わった事を言ってもしょうがないな。

あまり深く考えるのは止めておくか。


そうして体感で一時間ほど歩いたところ、今までより一際デカい溶岩溜まりが

ある場所へ辿り着いた。

「ここ、ここが洞窟の一番奥だよ。」

「暑いである……」

「うおぅ……この熱気はきっついわ~……」

溶岩溜まりが近くにあるせいで、暑さも今までの比じゃない。

装飾具を用意してもらわなかったら、どうなっていたか……


「それで、どうやってイフリート様と連絡を取るのかしら~?」

「んっとね、ちょっと待って……あ、あった!」

フィルが自分の荷物から赤い石を取り出した。


「何ですか、それ?」

「これはね、【火精霊の怒り】だよ。」

【火精霊の怒り】というのは、火属性の力が込められた石で、これを溶岩に

投げ込むと、力が強まったイフリートが、この世界に姿を作り出す事が

できるという。


「でも、来てくれない場合もあるんでしょ?」

「あくまで、イフリート様の気分次第だからね。そこに関しては

何とも言えないよ。」

ここで運頼りか……出てくればいいんだがな。


そしてフィルが、石を投げ込んだので、あとは待つだけだ。

「そういえば、前に【水精霊の涙】っていうのを聞いた覚えがあるが、

同じ様な物か?」

「そうだよ。【火精霊の怒り】【水精霊の涙】【土精霊の微笑】【風精霊の吐息】

が、それぞれの名前通りの属性の力が秘められた石なんだ。」

「貴重なんじゃないんですか?」

「一応はね。精霊がいたでしょ?あの人達が魔石に属性の力を籠める事で

作れるんだけど、結構な力を使わないと作れないから、少し割高なんだよね。」

町に帰ったら、代金くらいは払っといたほうがいいか。


しばらく喋っていたが、一向にイフリートが出る気配がない。

「まだ出ないである?」

「気分次第だからね、待つしかないかな。」

「イフリート様~、ワタシはイオネ王国女王、スターナと言います~。

お話だけでも聞いて頂けませんか~?」

スターナが溶岩溜まりに向かって話しかける。


「何してる?」

「もしかしたら、と思って~。」

確かに女王から話しかけられたら、普通の人間なら対応しない訳にはいかないが、

相手は通常の人間じゃないしな。

「早く出てきなさいよ~!」

詐欺師まで溶岩に向かって叫びだした。


すると、溶岩に気泡が出来始めて、それがどんどん増えていく。

そしてついに、全身が燃え盛る10m程の巨人が姿を現した。

《むぅ……何者?》

ついにイフリートとご対面だ。

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