第186話 またか……

チリィン……

ドォォォォォォォン!


《ぬぅお!?》

鈴のような音と何かがぶつかる様な音がして、ドラゴンがぐらついた。

「ズギャア、今のうちに!」

声の方を見ると、詐欺師がベルを構えていたので、ステータスを確認すると

HP:8321の表示があった。

ちょうど100もダメージを食らわせている。

《ふざけた真似を!》

頭に来たのか、詐欺師達の方へ炎を吐こうとしたので、


「水よ。深き生命の源よ。我が前に立ちふさがりし愚かな魂を

貫き滅ぼしたまえ……アイススピアー!」

《がふっ!》

俺が魔法で顎を打つ。行き場を無くした炎が、口の中で爆発する。


チャンスと見て、再度近付いて足を斬りつける!

《ぐっ!小癪な!》

だが、ウロコが硬くてまともに刃が通らないせいで、そこまでは

効いていないようだ。

「親父の傑作なのに!?」

どうやら、ドワーフの武器でも簡単には攻撃が通らないらしい。

それでも折れないだけ凄いがな。まあいい、ならば!


「ふんっ!」

《ぎゃあ!》

思いっきりぶん殴ると、足が浮いた。効いている。



「えっ?殴った?」

「うわぁ……アイツってば……」

「勇者殿ですね。」

「さすがズギャアである。」

「う~ん、ちょっと人間離れし過ぎかしら~?」

聞こえてるぞ?


だが、相手のDEFも高いため、今までの敵ほど通用しない。すぐに

反撃してこようとしてくる。

「詐欺師!」

「え、あ、うん!」

ドラゴンの反撃に合わせて、詐欺師がベルを使い、タイミングをずらす。


「スターナ、これぶつけて欲しいである!」

「はいは~い、任せて!」

スターナが、相手の足元に落とし穴を作って体勢を崩し、サーシャ特製の

目つぶしやら攻撃になりそうな薬を転移させて、上からぶちまける。


《な、これは何だ!?》

怯んでるうちに、俺がぶん殴ってダメージを与えていく。

中々にいい連携が取れている。


HPが4000を切った時だった。

《クソどもが!》

そう言うと、洞窟全体が揺れたんじゃないかと思うほどの咆哮を上げた。

「くっ!」

とっさに耳を抑えるが、何も聞こえない。聴覚がやられたか!


慌てて他のヤツを見ると、様子がおかしい。今のが【惑いの咆哮】か!?

あの声は、相手を混乱させる効果があると記載されてたから、おそらく

間違いない!


「水よ。深き生命の源よ。苦しみもがき、救いを求める者 《させるか!》」

ドラゴンが腕を上げて、振り下ろしてくる。さすがにあの大声だと何とか

聞き取れるので、攻撃タイミングが分かって間一髪避けられた。


「邪魔だ!」

《このまま、人間ごときに負けられる訳がなかろう!》

相手も必死に抵抗してくる。しかし、早くアイツらの状態異常を治して

やらないと……!どうする!?


少しの間ドラゴンの相手をさせられて、耳の調子も戻り始めたが、

治療してやれずに焦る俺の傍を走り抜けて、ドラゴンに斬りかかる人影。

《なっ!》

「駄目じゃないですかぁ……」

いつか見た事があるな、この状態は。


「ふふっ……私のぉ、愛する人に手を出したら、お仕置きですよぉ?」

「気が削がれるから、止めてくれ。」

アリアが剣を構えて、俺とドラゴンの間に立ちはだかっていた。

なんでコイツは毎回毎回、状態異常で似たような雰囲気になるんだ?

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