第180話 誰に頼む?
「一番、マルコ様から行くぜッ!俺の得意なのは歌だから、一曲
歌わせてもらう!」
お~ 我らドワーフ~ 酒が好きで気の良いヤツらばかり~
我らにかかれば どんな素材でも 世界一の武器や防具に早変わり~♪
ステージ上では、一人目のドワーフが歌いだした。
得意というだけあって、荒々しいながらも心地よい歌声で、それを肴に
観客たちは酒やつまみを食べまくっている。
「これは、何なんだ……」
フィルとドゥーダに神鉱石を見せたら、尋常じゃない大声で叫んだ。
それに驚いて、見習いと言われたドワーフ達が近寄ってきて、同じように叫ぶ。
すると、仕事の邪魔するなと、近くの工房のドワーフ達が乗り込んできたが、
神鉱石を見て、全員が似たようなリアクションを取る。
神鉱石の話は瞬く間に町中に広まり、
「俺に加工させてくれ!」「いや、俺が!」「引っ込んでろ若造が!」
「ロートルが出しゃばるんじゃねぇ!」
と、暴動さながらの大喧嘩が始まりそうだった。
それを抑えたのは、ドワーフ達の妻。
片手にフライパンや木槌を持ってきて、自分の夫達に遠慮なく振り下ろしていった。
「カカァ、ちょっと待って!」「やかましい、このロクデナシ!」
「死んじまうから!」「人様に迷惑かけてんじゃないよ!」
まさに地獄絵図といった感じだ。
さすがに俺を含めて、四人もドン引きしていた。
騒動が始まって数十分後、ドゥーダの工房には死屍累々という状態で
倒れたドワーフの群れ。
だが、神鉱石を加工する事については諦めきれないヤツらが、チャンスをくれ
と直談判してきて、さっきの一発芸大会に繋がった。
他の客たちには悪いが、通常の営業はすべて中止になり、急きょお祭りが
始まった。
「アンタ、どエラいの持ってきちゃったわね。」
「俺もこうなるとは予想できなかった。」
「あの鉱石、よっぽど凄い物なんですね。どこで手に入れたんですか?」
「取り出した袋もなんであるか?普通は絶対に入らないはずである。」
俺も質問攻めにあい、どう答えていい物か迷う。
神様から貰ったなんぞ、誰が信じるだろうか?
「みんな~、勇者ちゃんが困ってるでしょ?それにドワーフ達の芸も
見てあげないと、ね?」
スターナが助け舟を出してくれたおかげで、追及の手が伸びてくる事はなかった。
「二番手やるぜ、俺の自慢は怪力だ!」
そう言って取り出したのは、鉱石。
「うおりゃあ!」
それを片手で握り潰した。それを終えると、ステージ上に誰かが上がった。
「どんなもんでぇ!」
「売りもんダメにしてどうすんだい、このポンコツ!」
「げっ!母ちゃん!?」
どうやら妻だったらしく、右ストレートを食らっていたが、体が二回転した。
それを見た観客は大爆笑だ。
妻の方が怪力なんじゃないか?
それからも一発芸は続いていたが、出し物が終わると、ドワーフ達の目が
俺達の方に一斉に向いた。
「さぁ、この中から武器を作らせるヤツを選んでくれ!」
そうは言われてもな、どうするか?
「誰にやらせるかはともかく、そもそも加工できんじゃろ。」
悩んでいたところに、誰かの声が響いた。
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