第179話 フィルの兄

「へぇ、武器を作りにここへ。」

「あぁ。」

俺達はフィルの兄――ドゥーダがいる工房に招かれて、隅っこの方で

訪ねた理由を説明した。


周りでは、この工房で働いてるドワーフ達が、せわしなく動いている。

「お邪魔でしたでしょうか?」

「構いやしませんよ。こんな事で集中が切れるようなヤツは居ませんし。」

確かに、時々こっちに目をやるのはいるが、ほとんどが自分の仕事に熱中している。


「継ぐって言ってた家業は鍛冶屋だったんだな。」

「そうっすよ。」

「まさか、兄貴と勇者さん達が知り合いだったなんてね。いろいろと話は

聞いてるよ。兄妹揃って命を助けてくれたなんて運命かもね!」

どうやら武闘大会の事は家族に話したらしい。


「でも何で、武闘大会に出てたの?」

「いや、そのな、はは……」

詐欺師の質問にバツが悪そうに、乾いた笑いで返すドゥーダ。


「兄貴はね、男なら人生で一度くらいはデカい花火を上げないと!

って言って家を飛び出したんだけど、まぁ結果は知ってる通り。

戻ってきた時は、家の前で地面に頭を擦り付けながら、親父に謝って

許して貰ったんだ。」

「ちょ!?客人の前で言う事ねぇじゃねぇか!」

「それでも許してくれそうにない親父に口添えしたのはボクだろ?」

「ぐむぅ……」

どうやら妹には頭が上がらないらしい。


「別に鍛冶屋でもいいじゃない。人が欲しがる物を作れるっていうのは

凄い才能なのよ~?さっきも商品を見せてもらったけれど、いい腕

してると思うわ。」

「スターナ様にお褒め頂けるとは光栄でさぁ。」

「でも、この工房で武器は作ってないである?」

そう、さっきから走り回ってるドワーフ達が手に持っているものは

細工物ばかり。確かに細かい模様が綺麗で、高価そうな物には宝石まで

あしらわれているが、肝心の物を作ってるところを見かけていない。


「あぁ、武器や防具を作るのは、この工房では俺と親父だけだ。」

「何で?」

「今、作業してるやつらは見習いばっかりだからな。修行中だから

手先の訓練用に、細かい物を作らせてるんだ。」

「腕が無い人が、命に関わる大事な道具を作ったりなんかして、壊れでもしたら

シャレにならないからね。」

そんなもんなのか。


「それより、そろそろ素材を見せて欲しいな。実はボク、

ずっと気になってたんだよね!」

目を輝かせて、身を乗り出してきた。まぁ加工してもらう訳だし、

そろそろ出すか。


「素材はどこに出せばいい?」

「ここに、そのままで構わないぜ。」

「そうか、じゃあ……よっと。これなんだが……」

素材を出した瞬間、二人が固まった。脳筋たち四人も同じリアクションをしている。

まぁあの小さな袋から、これだけの量の鉱石を取り出したら驚くか。


「で、加工で「な……」どうした?」

ドワーフ二人が震えだして、鉱石を食い入るように見つめている。そして、


「「なんじゃこりゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


工房が震えるほどの大声だった。




「あの素材を加工するのは誰か!?ドワーフ達の一発芸大会、開始だぁぁぁぁ!」

「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」

……どうして、こうなった?

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