第170話 神との会話

【鑑定】で確認してみるが、何も表示されない。この鉱石自体もスキルが

効かないようになっているらしい。

「これは?これが魔鉱石というヤツか。」

「残念、ハズレじゃ。」

違うのかよ!

「それは対を成す、神鉱石というものじゃ。この世界では、かつての

勇者達が持った武器くらいにしか使われとらんのぉ。」

相当レアな素材だな。


「何で、これを俺に?」

「今までここに来た人間はこれから何かをするべき為に訪れるのじゃ。

お主もこの先、大きな事を成し遂げるはず。餞別代りじゃ。」

「説明が分かりづらい。」

「人間なんじゃったら、自分で知る努力をせんかい。何でもかんでも、

すぐに答えが出ると思わない事じゃの。」

そう言われると、そうなんだがな。


「しかし、これは持ち運びがキツイな。」

尋常じゃない量の神鉱石の塊を持って歩く訳にもいかんだろう。

「これに入れておくといい。」

「これは?」

「別の空間に繋がっておってな、この大きさの物ならギリギリ入る。」

渡されたのは小さい袋だったが、袋の口に塊をあてがうと、掃除機に

吸い込まれるように、スッポリと入っていった。

「凄いな。」

「じゃろ?一回しか使えんがの。」

どうせなら無制限に使わせてくれよ。

「さて、やれそうな物もないし、戻るとするがよい。」

そう言って席を立ち、家を出たので、俺はその後を追った。


「待て、まだ聞きたい事は山ほどある。まずここはどこだ?俺は

どうやってここに来た?」

「時の狭間、さっきもチラと言ったが、何かを成すべき選ばれた人間が、

偶然入り込んでくる。どうやってかはワシも知らん。」

「神なのにか?」

「神ですら知りえない、ことわりという物があるんじゃよ。」

つまり、ここを離れたら二度と戻って来れないかもしれないのか。


「アンタの名前は?」

「名無し、忘れられた神。という訳で誰も知らん、無論ワシもな。

神の名は人が付けてこそ、名となる。自分で付けるもんでもあるまい。」

誰もか……それは少し寂しいな。


「そうじゃ、言い忘れておった。」

「何だ?」

「いや、止めとこうか、どうしようかの?」

そこまで考え込むなら最初から口に出すなよ。


「ま、えぇか。魔石と魔鉱石についてじゃが。」

「その二つが何か?」

「何故そのような鉱石があるのか、意味を考えるがよかろう。」

「意味?」

「ヒントは与えたんじゃから、後は自分で……の。」

まどろっこしいな、本当に。


そこから先はいくら話をしてもはぐらかされたり、流されたりといった

感じで、そのまま歩いていると最初に落ちてきた広場に出た。

「ここの中央で、戻りたいと念じれば戻れる。」

「そうか。」

俺は広場の中央に歩きだした。


「中々、素直じゃの。もっと聞く事があると駄々をこねるかと思ったのに。」

「もう本当に話す気が無さそうだったしな。」

「その通り。むしろ話し過ぎて、どうしようかと思ったわい。」

俺は中央に立ち、戻りたいと念じると体が光ってきた。


「最後にワシから聞いてもいいかの?」

「何を?」

「お主はこの世界を気に入ってるのかを、じゃ。」

その質問を聞いて思った事。それは、


「……あぁ。これからも俺はこの世界を生きていきたい。」

「そうかそうか。良かったわい。」

そうして目の前が真っ白になった。

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