第169話 異世界の神

「神……神か。」

「信じておらんの?まぁよい、立ち話もなんじゃ。付いて来るとよい。」

神と名乗った老人が歩き出す。

俺は悩んだが、もしかしたら戻る方法を知ってる可能性もあったので、

言葉に従い、付いて行く。


しばらく歩き続けると、ボロボロになった家が一軒建っていた。

「ワシの家じゃよ。」

老人は一言だけ告げ、扉を開けて中に入っていった。俺も家に入ったが、

「何もないな。」

机、椅子、ベッドだけの部屋は、生活感というのが一切感じられ

なかった。


「遠慮せず、座ってよいぞ。」

勧められたので椅子に座ると、老人が何もない空間から、ボットとカップを取り出して、茶を入れ始める。


「今のは?」

「創ったんじゃよ。」

「創った?」

「そう、無から有を生み出しただけじゃ。神にしかできんがの。」

さっきから、やたら胡散臭すぎるんだが。


「嘘つけとでも言いたそうな顔しとるの。」

「当たり前だ。自分で神と名乗るヤツが目の前に現れて信じるのは、

馬鹿か純粋のどっちしかいないだろ。」

「言えとるの。」

自称、神様がそれを肯定するのもどうかと思うが。


「それに神様は女神だろ?アンタは男だ。」

「ティリアはワシから産まれた神じゃ。別人格のようでもあり、子供でもあり、といったところじゃ。」

「そうか、そりゃ良かった。」

「お主、信心が足らんのう。日本・・でも神から産まれた神がおるんじゃから、

もうちょい信じてもよいじゃろ?」

……今、何て言った!?


「おい、今のセリフ!?」

「ん?じゃってお主、日本人じゃろ?転生して、この世界に来ておるしの。」

コイツ!?

「アンタが神だって言うなら、俺が今ここにいるのはアンタが仕組んだからか?」

「違うの。ワシは――というか神というのは、ただ生きておるだけじゃ。

世界に対して手を出す事はない。」

神が何もしない?


「当たり前じゃろ。ワシが手を出せば世界なんぞ、簡単に変わっちまうわい。

種族、形、在り様も、すべてな。」

「じゃあ俺は一体どうして転生したんだ?」

「ティリアの仕業じゃの。」

「そいつも神じゃないのか?」

「いんや、ワシの力を受け継ぎはしたが、神となるには遠く及ばん。

それでも人間よりは強大な力を持っていて、魔王が倒した際に当時の勇者に

力を貸して、人から女神と呼ばれただけじゃ。」

この世界の人間が話を聞いたら卒倒する内容じゃないか?


「信仰を受ければ力は強まるが、百ン十年くらい前にできた新しいもんじゃし、

本人はまだ俗世にいるから、神となれるほどは成長はせんのう。」

「女神が普通に暮らしてるのか?」

「そうじゃ。身を隠すにはセンスも足りないから、探そうと思えば探せる

かもしれん。」

よく分からんが、世界のどこかで仮の神様が暮らしてるっていう爆弾発言だけは

理解できた。


「まぁいい、とりあえずティリアはどうして俺を転生させた?」

「本人に聞くしかあるまい。ワシがそこまで教えるのはルール違反じゃ。」

「……さっきまでの話はルール違反じゃないのか?線引きが分からん。」

「気分かの?」

この神はダメなタイプの神っぽい。


「ま、教える代わりに材料でもやろうかの。」

「材料?」

「ここに来れたという事は必要になるじゃろ。ほれ。」

床の上に創り出されたのは、鈍く光る漆黒の鉱石だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます