第168話 思わぬ出会い

俺は岩を慎重にどかすか、握り潰すか、殴り砕くかして邪魔な物を

どかしている。

「……」

「?どうした。」

「いえ、人間離れした事する時があるから、見ると呆れるって三人から

聞いていたけれど、実際見ると凄いわね~。」

アイツらは後で説教でもしておこう。


スターナは得意の魔法で落とし穴を作り、そこに岩を落として、作業が

スムーズに進むよう、手伝いをしてくれている。

岩をどかしていくと、救出する相手の姿が見えた。

「おぉ!助かった!」「このまま死んじまうかと……!」


崩落した岩の向こう側で騒ぎ始めたが、まだ助かると決まった訳では

ないので、もう少し落ち着いて欲しいものだ。

そして人が通れるほどの穴が開き、いざ脱出となった時、


ゴゴゴゴゴ……


「マズいな、崩れるぞ。」

「みんな早く出て!」

穴からどんどん這い出てくるツアー客。人間や獣人などいろんな種族の

ヤツらが入り口を目指して走り出す。


そしてサイクロプス、主犯格と思われる三人が出てきた。

「俺達で最後だ!」

「ん?最後?」

「あぁ、そうだ!早く逃げようぜ!」

「十四人しかいなかったが、残り一人はどうした?」

さっきのツアー客とサイクロプスを合わせても足りなかった。


「そ、そんな事どうでも……「助、けて……」」

穴の奥の方で声が聞こえたので目を向けると、岩に挟まれて身動きが

取れない子供がいた。

「お前ら……」

「ひっ!」「こっちだって死んじまうかもしれねぇんだ!構って

られるか!」

そして三人が走り去っていった。


「待ちなさい!」

「今は放っとけ、それよりも!」

俺はさっき開けた穴から入り込み、その子供を助け出す。が、

「何!?」

地面が抜けたとでもいうのだろうか、足場が急になくなり、浮遊感に

襲われた。


「スターナ!逃げろ!」

俺は子供をスターナに向かってぶん投げた後、重力に従って

落ちていった。



落ちていく間に考えた事。それは、この状態があまりにもおかしいと

いう事。

正確な時間は分からないが、あれからずっと落ち続けている。

いくらなんでも、こんな深い穴があったら今までに発見されている

はずだ。

そう思ってから、さらにしばらく経ち、地面が見えてきた。


「ふっ!――と、ここはどこだ?」

地面に着く前に体勢を整えて、着地した後に辺りを見回す。

体感時間で四分くらいは落下していた気がする。

周りは水晶のようなものが乱立して、幻想的な雰囲気を醸し出している。

【見識】で確認すると、自分がいるのは広場の中央みたいな場所で、

どこかへ繋がってると思われる道が、何本か見える。


「どうするか?」

「こんなところに人が来るとは。」

いきなり後ろから声をかけた!?油断してた気もないし、何より【見識】に

映ってないだと!?


「あぁ、ワシはそういう探知やら確認系のスキルは効かんから無駄じゃぞ。」

やけに古臭い言葉を喋る老人がそこにいた。

「……あんたは?」

「ワシか?そうさの、人間達の言うところの神じゃ。」

……胡散臭すぎる。

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