第167話 採掘場へ

「いいなぁ、欲しいなぁ……」

「少なくとも、今は諦めろ。」

「はい……」

脳筋が振っていた剣も買えない事が分かり、食堂で飯を頼みつつ

悩んでいた。


「やっぱり、ヴァファール王国に請求するか。」

「面倒見るって約束で勇者になったんだったら、別にいいと思うわよ?」

「な、なんか悪い気が……」

「じゃあ六魔の誰かに持ってきてもらおうかしら~?マノムちゃんなら

文字通りに飛んでくるわよ?」

「マノムが来るなら、我が輩もトゥクカと結婚するって報告するで

ある。」

「頼む、勘弁してくれ……」

サーシャが俺の膝の上に座ったまま、そんな事を言ってくるが、面倒が

増える予感しかしない。


「羨ま――じゃなかった。じゃあ、お言葉に甘えて「誰か、手の空いてるヤツはいないか!?」」

食堂の扉が開き、中に慌てた様子のサイクロプスが入ってきて叫んだ。

ざわつく食堂内に響き渡る声、

「魔鉱石の洞窟が崩れた!仲間も生き埋めになってんだ!」

緊急事態だ。



「ここが、第六の入り口だ。」

俺達の方から食堂で声をかけて、町から十五分ほど行った場所にある

山のふもとにある採掘場に案内させた。

話によると、一つの山すべてが採掘場になっているらしく、ふもとには

一から九までの入り口があり、それぞれの箇所から掘り進めている

らしい。

なぜか、この山の魔鉱石は掘っても再生成されるし、入り口付近でも

質のいい魔鉱石は手に入る事があるらしいが、サイクロプスのお仲間が

金に目がくらんで

中に入り過ぎたらしい。


「ちゃんと注意しないとダメよ?」

「すんません……」

スターナに軽く諫いさめられ、デカい図体を小さくしながらサイクロプスが謝っていた。

「で、何人が閉じ込められたのかしら?」

「三人でさぁ。」


「それよりも、さっさと助けに行くぞ。」

「勇者殿、私達も!」

「駄目だ。また崩れた時に巻き込まれたらどうする?それにもう日が

暮れてる。洞窟内は危険だ。」

「でも……最近は勇者殿とスターナさんに危ない事を任せっ放しな気が

して……」

脳筋、詐欺師、サーシャは入り口で待機させる事にしたが、それが

不満らしい。


「夜だし、もしかしたら魔物が襲ってくるかもしれない。そんな時に魔物に 襲われたら、困るだろ?それにお前らを信頼してるから戻ってくる

場所を任せられる。頼んだぞ?」

「……!分かりました。」

「ドュッカ、ちゃんと帰ってくるである。」

「昔のアンタじゃ言わなそうなセリフね。しょうがないから任されて

あげるわ。」

「そうか、じゃあ行ってくる。」

そして俺とスターナは洞窟に入っていった。サイクロプス達も邪魔になる

可能性があるから来るなと釘を刺しておいた。


「暗いわね~。松明二本じゃ見えにくいわ。」

スターナは入り口から一定の距離で魔法陣を設置してから入ってきて

いる。

通常は視界に入る範囲しか転移できないが、前もって設置している場合は、好きなタイミングで発動できる。

これなら一気に距離は稼げなくても、連続転移で外まで行ける。


「でも、種族がサイクロプスだと、同時に飛べるのは頑張って

二人かしら。」

「体がデカいからな。」

前もそうだったが、複数人を転移するのはキツいらしく、さらに緊急事態が起こった場合、スターナ含めて三人までしか対応できないらしい。

「何も起こらなければいいがな。」

ちなみに、俺に何かあった場合は、一人なら助かる方法はいくらでもあるから、自分だけで逃げろと口酸っぱく言っておいた。

なんせスターナのDEFは低すぎるから、不慮の事故で死にかねん。


しばらく歩くと、崩落した場所が見えてきた。

「おい、誰かいるか?」

大声を出す訳にもいかず、聞こえるかどうか不安だったが、

「た、助けに来てくれたのか!?」

返事が返ってきて一安心だ。


「そっちは無事か?」

「十五人、全員無事だ。」

十五人?


「聞いてた人数は三人だが、手違いか?」

「あ、いや、その……魔鉱石の採掘場ツアーって言って、実際掘らせ

ようと連れてきたんだが……」

仮にも採掘なんて危険が伴う作業を、ツアー客なんて素人にやらせても

いいのだろうか?

スターナを見ると、冷めた笑みをしていたので怒ってるんだろうな。

とにもかくにも俺とスターナは救出作業を始めた。

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