第166話 選び放題だけれども

「き、気持ち悪いです……」

「吐きそうである……」

「さすがにキツかったわ~……」

「慣れると平気ですよ。商人が素早く移動しようとすると必ず

使いますので。」


この世界の商売人は逞しいのが多いな。俺でも吐きそうなんだが……

「み、水ちょうだ――おぇぇぇぇ~……」おい、やめろ。


あれから休憩を挟みながら次の町に着いたのだが、サラ以外は全員

グロッキーで使い物にならなくなっていた。

「ここは、近くに魔鉱石が取れる洞窟があって、頻繁に町の位置が変わる

イオネ王国では珍しく、ずっとある町なんです。」

「魔鉱石?それは魔石とは違うのか?」

「魔鉱石は武器や防具などの加工品用ですね。砕けても魔法が

発動する事はありませんが、持っているだけで特殊な効果が出る場合も

あります。」

ちょうどいい、武器が欲しい時にいい町に来れた。


「魔鉱石は質にバラつきがあって、高品質の物は量もそんなに取れない

から、高値で取引されてるのよ~。」

「最高級の品は王族に献上させられたりするんですよ。いいなぁ~、一回でいいから振ってみたい……」

脳筋が手の届かない剣に思いを馳せてる。


「それでは急ですが、私はそろそろ行かないと。」

「あぁ、送ってもらって済まなかったな。」

「いえいえ、これくらいじゃお礼した内に入りません。」

サラが俺に近寄ってきて、腕を絡めながら言う。


「諦めた訳じゃないですよ。実家の場所は教えましたし、いつでも来て

頂いていいですからね?私も暇ができれば情報を買ってでも、探して

会いに来ます。」

そのセリフを聞いて、横から割って入る脳筋。

「じ、実家がお忙しいのでしょう!?でしたら、そっちを優先して

ください!」

「父も跡継ぎができるとなり、しかも家の大事を救った恩人なら、多少の無理でも聞いてくれるに決まってますし。」

目の前で攻防が続いていたが、時間が無くなったらしく、

「絶対、また会いに来ますから。」

最後にそれだけ言い残して、ダラ車に乗り込んだサラは去っていった。


「ほらほら、いつまでもサラを睨んでないで武器を買いに行きましょ?」

「そうであるね。」

そう言い、町を歩き回ってみることにした。



「これは迷うわね。」

「どうするである?」

「やっぱり自分で触ってみないと!」

歩き回るつもりだったんだが、思った以上に武器や防具を売ってる店が

溢れかえっていて、どれを見ればいいのか分からない状態だ。


「レブズの治めてた町で大量に飲食店があったが、似たような感じだな。」

「わざわざ訪れて買っていく人もいるから、儲けやすいのよ~。」

質が悪い魔鉱石で作っても、通常の鉱石で作られた武器や防具よりも頑丈で長持ちするらしく、求める人は多いそうだ。


こんなに店が多くて、売ってるものは被らないかと思っていたが、

どんどんと売れていくので、被ったところで問題はないらしい。

脳筋はさっきから目を輝かせて剣を振っている。だが、

「高いな。」

今、脳筋が持っている剣は360金貨の表示。他の武器も軒並み似たような値段。

多分、店を変えたところで、値段はそこまで下がらないだろう。

持ち金では一本すら買えないとなると、どうするか……

ヴァファール王国に金の催促でもするか?

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