第165話 武器を求めて

「みなさんお揃いですね。」

俺達のところにサラがやってきた。


「う~……サラさんも、サーシャちゃんまでライバルに……」

脳筋が唸り声を上げる。

「あら、私はライバルではありませんよ?ある意味、仲間じゃない

ですか。それと……サーシャちゃんも?」

「我が輩もジュワァと結婚するである。」

「そうなの?」

サラとサーシャは何故か意気投合していたが、会話の途中で思い出した

ように実家に戻らなければいけないんだった、と言った。


「借金の件か。」

「それも含めて諸々です。それでですね、ダラ車を頼んでるんですが、

良ければ一緒に乗っていかれませんか?」

「ダラ車?」

どうやら馬の代わりに、ダラという動物に荷台や客車を運ばせるという

もので馬車より速度が出るらしい。


「ただ、速い分だけ乗り心地も良くないんですが。」

「まぁいいんじゃないか?」

「そうね、乗せてもらえるなら次の町までお願いできる?」

「はい。」


「その前に、だ。」

「どうかしたの~?」

「武器を探さないとな。」

「そういえば、そうであるね。」

俺はまだいい。半分に折れようと特に不便な訳じゃないし、無いなら

殴れば済む話だ。

だが、脳筋はさすがに武器がないと困る。

そう思って確認すると、やはり柄の部分が握りつぶされてる。


「……よくもまぁ、こんな芸当ができたな。」

俺のステータスならともかく、脳筋はまだ常識の範囲内だったはず

なんだが。

「こ、これはですね、必死になったらというか……使い過ぎて脆くなってたんですよ!

きっとそうです!」

慌てて言い訳をし始める。


「この町に武器屋は無かったしね。」

「じゃあ、さっさと次の町に向かっちゃいましょう。」

「そ、そうですね。」

俺達はサラの好意に甘えて、ダラ車とやらに相乗りさせてもらう事に

した。



「これが、ダラって動物か。」

「初めて見るである。」

外見は図鑑で見たヴェロキラプトルのような風貌で、大きさは馬の二倍はある。 客車は屋根付きではあるが、鉄と木を組み合わせて頑丈さを

優先した、簡素なものだった。

「大きいわね。」

「見た目はちょっと怖いかもですけど、大人しいんですよ?草食ですので、よっぽどの事でもない限りは、人間を襲ったりはしません。」

これで草食動物なのか。


「全員乗りましたか?」

ダラの後ろに括り付けた客車に横一列で座らせられ、体を固定するために

腰骨辺りに、縄のような物を巻き付けられた。車のシートベルト替わりか。

詐欺師は何かに入るよう指示されたので、俺の道具袋に入っている。

「何故だ?」

「かなり速度が出ますから、体を固定させないとダメなんですよ。でも、

リュリュさんは体が小さいですので。」


「並び順に意味はあるんですか……?」

進行方向に向かって左から脳筋、スターナ、サーシャ、俺、サラの順だ。

「深い意味はありませんよ?」

「う~……」

最近、唸ることが多いなアイツ。


そしてダラ車は走り出したのだが、

「は、速い、わね~。」

「女王様、口は閉じといた方がいいですぜ。舌を噛み切っちまいまさぁ!」

御者から声がかかる。確かに相当なスピードが出てるな。

サラとサーシャは俺の腕にしがみついて、スターナと脳筋はなるべく

背もたれにくっついている。


前の世界の通常速度で走ってる車より速かったが、それよりも客車に

振動が来ないように魔石で浮かせているので、細かな揺れが気持ち

悪いのが一番の問題だ。

俺達はダラ車に乗り、そのまま次の町まで向かった。

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