第156話 子孫と対面
玄関に行くと、四人が俺を待っていた。
「ヅグア、そっちはどうだった?」
「廃屋になった以外、特に問題はなかった。」
当たり障りのない言葉を並べて、とりあえず何もなかったフリをする。
なんせ、過去に戻ったなんぞと言っても、頭がおかしくなったとでも
思われるのが、オチだ。
とりあえず屋敷を出ようと決めたところで、玄関の扉が開いた。
「あの……どちら様ですか?」
二十代くらいの女性が一人と鎧を着けた男が二人、それに商人風の格好をした男が、十人程こちらを見ている。
「はぁ……あそこは、ずっと使われていないんですか?」
「えぇ、ここ九十年ほどは。」
今は街道に出る道を歩きながら、話をしている最中だが、どうやら
ケヴィンの玄孫らしい。というかどう見ても……大きくなったサラだ。
面影が残ってるし、
教えてもらった名前も一致した。
当然だが、向こうは俺を覚えていないらしい。なんせ産まれる前に
会っただの、オカルト以外の何物でもない。
「でも、どうしてあの廃屋に?それに、そちらの方はスターナ様に
似ているような……」
「その通りよ~。」
「え゛っ!?」
いや、まぁ一国の主がホイホイ歩いていたら、驚くだろうな。
「ちょっと事情があって、旅をしていてね~。」
「そ、そうなんですか。」
「それで旅の途中で、あのお屋敷にいたバル――むぐ!?」
俺は脳筋の口を手で塞ぐ。
「すまんが、勝手に泊まらせてもらった。問題あったか?」
「いえ、先ほども言った通り、使われていない屋敷で鍵もかけていませんでしたので。」
脳筋がむぐむぐ口を動かすので、手を離して小声で喋る。
「いいか、昨日の事は言うな。」
「どうしてですか?」
「人の屋敷に勝手に入って、曽々爺さんに会った。なんて言ったらどう
思われる?」
「それは、変な人だなって……なるほど。」
脳筋も察したらしい。というか、他の三人はあまり口にしていない
事から、すでに分かってるみたいなんだがな。
「そういえば、あそこは魔法がかけられて、風化しないようになって
たんじゃないのか?
凄くボロボロになっていたが。」
「さすがに整備もしないまま、魔法もかけ直さないと、ああなって
しまいます。」
ケヴィンが家業を継いだ時点で、家を空けることが事が多かった
らしいが、バルトの死をきっかけに、ヴァファールへ引越したらしい。
今はサラの父親が継いで、現在の当主を務めているそうだ。
「サラさんは何でここに?」
「少々、確認したい事がありまして。」
その時、ちょうど街道に出た。街道にはやたらデカい馬車と護衛が
待っていた。
「近くの町まで行かれるのですよね?でしたら是非、馬車に乗っていってください。」
「いいの?自分で言うのもアレだけど、私達が何か企んでるかもしれないわよ?」
「我が家の家訓で旅の方には親切にしろというのがありまして。それに
悪い方々には見えませんし。」
それで信用するのもどうかと思うが、せっかくの厚意には甘えておくか。
俺達は馬車に乗り、近くの町まで送ってもらう。
さっきの屋敷を商人風の連中が調べていたが、今それを気にしても仕方がないしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます