第147話 住民が消えた原因(アリア視点)

「もう町にいられる最後の日になっちゃいました。」

結局、誰も戻って来ませんでしたね……町の外に行ってみましょうか?

でも勇者殿から固く止められてるし……

近いですし、ちょっとだけならいいですよね?




「誰か!いませんか!?」

森の中にもいませんね。本当にどこにいるんでしょう?

かれこれ探して一時間は経ってしまいましたし、一度戻った方が……

――羽音?


ヴヴ……


何で急に?


ヴヴヴヴヴ……


増えてる?一旦、退却した方が……


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!


これは!

「まさか巨大殺人蜂ジャイアントキラービーの群れに遭遇するとは!」

2~3mはある蜂が二十匹ほど、逃げ切るしかない!

「ギチギチギチギチ!」

顎を鳴らして威嚇されるの怖いんですけど!


まずは先頭の蜂を斬り落としてぇ!

「はぁ!」一匹目!

次、他のに襲われる前に包囲が薄いところのヤツを斬ります!

「でりゃあ!」二匹目!

最後、前に飛び込みつつ、前の蜂に突きを!

「せぇい!」三匹目!

このまま、もう一度草むらに飛び込――!


「がはぁっ!」

何……が……背中が……熱い!


「ギチギチギチ!」

あの……一番後ろの蜂、針がない、飛ばしてきた!?

そうして動けなくなった私は巣まで運ばれてしまいました。



「か……あ……」

運ばれてる最中、思い出したくもない事を思い出してしまいました。

それは、この魔物の習性。

体が大きいせいで一つの群れの数自体は五十匹くらいだが、熊ですら

一撃で噛み殺す 強靭な力がある事。

だが、見た目に反して針は殺傷能力が低い。

大きさの問題で低いと言っても当たり所が悪ければ死んでしまうが。

なぜ、殺傷能力が低いのかというと、理由はそのまま”殺さない”ため。


この蜂は卵が孵化する時期になると獲物を生きたまま取りに来る。

人であったり、同じ魔物であったり……どうやるのかというと、

力ずくで取ってくるか、 微弱な神経毒を相手に打ち込んで

動けなくした後、巣に連れてくるという。

そして最も恐ろしいのが、


生きている状態で肉を引きちぎり、肉団子を作って子供に

与えるという事……


魔物の中でも危険度は相当高いと聞いていましたが、自分がそんな目に

遭うとは!

「う……」

どうしましょう!?毒が回って叫ぶ事すらできません!


「ギチギチ!」

今、目の前にいるのは、私を連れてきた蜂だけですか。

他は巣を守ってるんですかね、っていうか笑ってるように見えて

怖いです!

どうすれば!?どう……す……


「ギチギチギチ!」

暗闇に目が慣れてきたせいで目に映るアレは……

あ、あの蜂の、後ろにあるアレ・・は、もしかして……


「あ……」

ひ、人の顔……!マズイ!本当にマズイ、くそっ!体が動いてくれれば!

どうしてこんな時に動かない!


「ギチギチギチギチ!」

「ん……!ぐ……!」ブチィ!

ぁぁぁぁあああ!痛い!腕の肉が!


グチャ……グチャ……

「ギチギチ!」


また向かってくる……こんな、こんなところで一人で死にたくない!

お父様、お母様、騎士団のみんなや、街のおじさん、おばさん達、

友達にも会いたい!

リュリュさん!サーシャちゃん!スターナさん!



――勇者殿!!


「アリア!」

その声が聞こえたと同時に、私の目の前の蜂が真っ二つになりました。

「く……」

「すぐに治す!」

そう言って私に治癒の魔法を施してくれたのは、

「ゆ……勇者殿……」

「大丈夫か?」

「は……い、何とか……」

怒った顔で私を見る勇者殿でした。


「馬鹿かお前は!勝手に町から離れやがって!」

「で、でも「でもじゃない!」……すみません。」

「何でそんな事をした!?」

「その、町の方が、心配でしたので……」

「だからって自分が死にかけたら意味ないだろうが!透明な板が

何なのか、サーシャが気付いてなきゃ終わりだったんだぞ!」

こんな怒ってる勇者殿は初めて見ました。驚きです。


でも、それ以上に

「私、守られてばっかりですね……騎士失格です。」

「そんな事はどうでもいい。」

「どうでもよくありません!私は騎士だから、みんなを守らなければ

いけないんです!」

「俺が代わる。」

「え?」

「俺がその役目を代わってやる。お前も、他の誰かも死なないように

守ってやる。だから無茶なんかするなよ……頼む……」

今にも泣き出してしまいそうな顔を見た事の方が、驚きでした。

驚きで役目を代わるとか、そういう話じゃないって言いそびれて

しまいました。


以前にリュリュさんから聞いていた話。

「ヂュガは普段は冷静にしてるけど、仲間が危険になると突っ走っちゃうからね。トラウマでもあるのかしら?」

その姿に今までにない感情が湧いてきて――勇者殿を抱きしめ、背中を

さすってあげると、少しだけ間があってから、恥ずかしそうに離されて

しまいました。



勇者殿が落ち着いてから、村に戻る事になったので、近くまで

恥ずかしかったですが、お姫様抱っこで運んでもらいました。

「大丈夫か?下ろすぞ。」

「あ、はい……あの、勇者殿。」

「何だ?」

「勇者殿にとって私は大切ですか?」

「当たり前だろ。大切な仲間・・だ。」

ふ~ん、仲間ですか、そうですか。


「あ、イタタタ……お腹が。」

そう言って、私はお腹を押さえて少しだけ屈んだ。

「どうした?怪我は治したはずだが……それに腹に怪我なんてしてたか?」

勇者殿が覗き込んできた。すかさず両手を伸ばして頬を掴み、

逃げられないようにする。


「――ん。」

男の人は固いと聞いていたのですが、思ったよりは柔らかい唇でした。

「な!なん、だ、なにを!?」

「私の方は仲間から少しだけランクアップ・・・・・・してしまいました。」

「お、おま!?」

「勇者殿が奥手なのは知ってます。だけど、いつか振り向かせて

見せますから。」


そのまま固まっていたので、私は先に宿に戻り、他のみんなに

謝ってすぐ、疲れたからと一人部屋に行き、ベッドにダイブしましたが、

「えへへ~、ちゅーしちゃった、ちゅー♪んっふふ~。」

眠れそうにありません。

今回、初めてこんな感覚になったのは、泣き出しそうな顔を見て

母性本能を刺激されたんでしょうか?

それ自体はいいんですが、ちょっとだけ後悔してしまいました。



「あ゛~!ちゅーしちゃったよ~……どうしよ?顔合わせらんないよ~!恥ずがじ~!」

朝になって我に返ったら、物凄く、尋常じゃないほど恥ずかしくなった

からです。

勢いだけでやるものじゃないですね……

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