第146話 誰もいない町

夜が明けて、全ての準備を済ませて歩き始めるが、空気が重い。

脳筋のテンションがやたら低いせいだ。

昨日も口数が少なかったが、周りに悟られないよう明るく振舞っていた。

だが、俺にバレたので、無理するのがキツくなったんだろうな。

サーシャとスターナも雰囲気を読んでか、あまり喋らない。


そんな拷問のような日々が一週間も続いて、そろそろ限界を感じた時、

「町が見えたである。」

やっと一息つけそうだ。


……と、思ったのが少し前。

「誰もいないわね……しかも建物もボロボロ。」

この世界に厄介事は付いて回るっていう発想をするべきだったな

チクショウ!


「何があったのかしら?」

「少し調べましょうか~。」

「いや、俺と詐欺師以外は休んでろ。」

「でも「さっさと休め。」……はい。」

スターナは体力的にそろそろ限界、サーシャも疲れを見せている。

脳筋はずっとあの調子だったからな。


「私も少しは休みたいわ~。」

「お前は俺の肩に乗って休憩取ってただろうが。」

「……テヘ♪」

詐欺師は歩いてる最中も、重い雰囲気を嫌って、ちょくちょく寝てたり

したから、体力があるはずだ。文句は言わせない。


そして三人を宿に行かせた後、町を見回った。

「これ、何かしら?」

「透明な板?」

道で時々見かけるプラスチックの板のような物体、大きさや形から、

カケラだと思われるが、それがいくつか落ちていた。しかも、

それがある場所の近くに限って、

「周りのは……血よね、コレ……」

血痕が残っている。


「この町には長居しない方がいいな。」

「賛成。せめて原因が分かればいいんだけどね。」

それから、どれだけ調べても住民に会う事はなかった。幸い、建物の中も

ボロボロだったが、幸いにして無事な食料があったので、念のために金を

いくらか置いて持っていく。

残念ながら武器屋はなく、剣の補充はできなかった。



「そう……何が起きてるのかしら?」

「さぁな。何にせよ、早く出て行った方がいいのは確かだ。」

「……あの、いいですか?」

脳筋が小さく手を上げて質問してきた。


「この村の人達は、その、何か危険な目に遭ってるかもしれないん

ですよね?助けてあげる事はできませんか?」

「どこにいるのかもわからないのにか?」

「そうなんですけど……」

その答えを聞いて落ち込む脳筋。


「……はぁ、三日だ。」

「え?」

「三日は滞在して調査する。それ以上かかりそうなら次に向かう、

それでいいか?」

「ワタシも見捨てる訳にはいかないしね~、賛成よ。」

「我が輩もいいである。」

「しょうがないわね、付き合ってあげるわ。」

「あ、ありがとうございます!」

そんなこんなで町に滞在する事になったが、二日経っても誰も戻っては

来ないし、プラスチックのような物の正体も分からないしで、結局は原因が分からないままだった。


そして三日目の夜、脳筋がいなくなった。

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