第145話 アリアの考え事

それからしばらく歩き続け、人の気配がしないまま夜。

「また野宿になっちゃうけど、スターナは大丈夫?」

「頑張るわ~。」

「次の町を見つけるまでの我慢であるよ。」

いつものように野草の採取や動物を捕まえて、晩飯にしたり、雑談を

したりして見張りを交代しながら就寝する事になった。


だが、俺はそのまま眠らずにフリだけしていた。

「……」 ザッザッザッ……

見張り役のヤツが周辺に罠を張って、森の中へ消えていくのを確認したので後を追う。




「ふっ!はぁっ!」

そいつは森の中で一心不乱に剣を振っていた。


「精が出るな。」

「!……勇者殿、ですか。」

「悩み事でもあるのか?」

脳筋はバツが悪そうに口を閉ざしたままだった。コイツがこんな

雰囲気になるのは二度目、あの願いを叶える泉の一件以来だからな。

また、状態異常にでもかかったらたまらん。


「もしかしてお前、自分が足手まといとでも思ってるんじゃないだろうな?」

「!」

体が一瞬震えたのを見ると図星か。以前も確か、役に立てなかったのが悔しいだのとかいう理由で操られてたしな。


「だって……」

「ん?」

「リュリュさんは魔法も使えますし、武器のベルだって上手く使えるようになってきてます。

この間もそれで敵を撃退してました。サーシャちゃんは小さいのに大勢の敵がいる時は凄く頼りになります。

スターナ様に至っては、勇者殿くらいしか勝てないじゃないですか。

胸も大きいし……」

最後が盛大に関係ない。


「私は多少、剣が使えるくらいです。サラマンダーの火には手も足も

出ませんでした。」

「サーシャに覆いかぶさって守ってたろ。」

首を横に振る。

「本当は危険に晒す前に敵を倒さなければいけなかったんです。

あげくに勇者殿の剣を、折ってしまうなんて……」

「それこそ、お前に何の関係もないだろ。俺の落ち度だ。」

俺が振るっても壊れないほど頑丈な剣が、サラマンダーの重量で折れるとは思わなかった。


「でも……私は自分が……」

「お前は変なところで責任感が強過ぎる。もっと気楽でいい。」

「すみません……今はそんな気分には……」

「そうか。」

これ以上言っても逆効果だと思い、気が済んだらさっさと戻って来いと

だけ伝えて、俺も戻る事にした。



「アリアはどうだった?」

「気付いていたのか。」

三人とも寝ていると思ったが、詐欺師だけは起きていた。


「あたりきしゃりきよ。私は気遣いの出来る女よ。」

「……そんな古い言い回し、実際に使うヤツ初めてだ。」

「そんな事はどうでもいいのよ。で?」

「重症だな。何をそんなに思いつめてるのか分からんが、下手に突かない方がいい。」

詐欺師がウンウンと唸って考える。


「あの子、騎士に憧れてたって言ってたしね。自分が敵わない相手が

いて、そのせいで誰かが少しでも傷付いたら自分の力が足りないせい

だって思い込むクセがあるのかもね。

そこをカバーするのが仲間ってもんなんだけど。」

「あいつはちゃんとサーシャを守ってたんだし、役に立ってたはずなんだがな。」

「真面目なのよ。」

その後も少し喋っていたが、俺が起きていると脳筋が戻ってきた時に

気まずいだろうという事で、詐欺師に引き続き見張りをしてもらい、俺は眠りに付いた。

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