第129話 波乱の予感
「スターナ様、どうしたんですかね?」
「また一騒動ありそうだ。準備だけはしておけよ?」
「うげっ……やだな~……」
「薬の準備をしとくである。」
ついでだし、この前の戦闘を見ての感想も話しておくか。
「脳筋、詐欺師、サーシャ。」
「何ですか?」
「どうしたのよ?」
「何であるか?」
三人が一斉にこっちを注目する。
「三人に言っておく事がある。まずは脳筋。」
「はい。」
「お前は接近戦が得意なだけあって、剣が届く範囲だと強いが、範囲外の
攻撃に意識が向いてない場合がある。特に弓や魔法に気を付けろ。」
「は、はい!」
返事がうるさいが、今はまあいいか。
「次に詐欺師。」
「アイサ~。」
「正直、攻撃に関しては弱過ぎる。ベルをまだ手加減して使えるように
なってないのもあるしな。だからお前は援護メインで、足止めや
遠くからの攻撃を知らせるか防ぐのを第一に考えておけ。」
「了解よ。」
ベルが使えるようになったら、攻撃に回してもいいんだがな。
「最後、サーシャ。」
「ん。」
「相手、効果範囲を気にしないなら薬は効果的だ。だが、この前は
乱戦になったからそこら辺を考慮して戦闘中に薬を混ぜ合わせて威力を
調整してたな?」
「そうである。」
「薬は失敗っていうデメリットもある。加えて作業中は無防備に
なるから、あらかじめ効果範囲が異なるのを数種類作っておけ。
できれば睡眠や麻痺など動けなくなるヤツをな。」
「分かったである。」
決まった弱点がある種族なら強いんだが、この前のように人間が混じった
敵と乱戦になると脳筋や詐欺師にも薬の被害が来る可能性があるのが
考えどころだな。
まぁこんなところか。
「何事もなければいいが、そんな訳にはいかないだろうな。」
そんな呟きを口にしながらスターナの消えた先へ足を向けた。
「どうしようかしらね~。」
「何があった?」
「あら、勇者ちゃん来ちゃったの?」
会議室のような場所にスターナと兵士が集まって難しい顔をしていた。
「どうせゴタゴタになるなら先に聞いた方がいいと思ってな。」
「う~ん、そうね~。じゃあ手伝ってくれるかしら?」
「内容による。」
そう言った俺に差し出されたのは一通の手紙。
中を確認してみると、
「これは……」
六魔とスターナの殺害依頼だった。
「マノムちゃんが狙われたでしょ?それで暗殺ギルドを調べていたら、
そんな依頼が
されてるのを突き止めたのよね~。」
「どうする気だ?」
「それはもちろん打って出るわ。」
スターナの顔には笑みが浮かんでいた。
「お前は自国民同士の戦いが嫌いじゃなかったのか?」
「普通の場合なら嫌いよ~。でも六魔のみんなやワタシの首が狙われてる
のならその限りじゃないわ。」
この国はそうは見えなくても、誰も彼もが好戦的らしい。
やられる前にやっちまえ精神で暗殺ギルドを滅ぼすのだそうだ。
まぁ仮にも国のトップを潰そうというんだから、それなりの覚悟はして
もらわんとな。
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