第128話 仇討ち?

「「「「……」」」」

まさに死屍累々といった感じだ。

四人がボロボロになって倒れている。


「な、なんでアンタ達は参加しないのよ……」

「面倒くさい……」

「妾は石化させられなければ意味がないしのう。」

フレーグベルとマノムは無傷だ。


「もう終わりでいいかしら~?」

全然余裕だな。さすがに実力で王の座についただけはある。


「ズギャアちゃーん!仇取ってー!」

「断る。」

「魔王の情報いらないの?」

「……」

コイツは……


「ふぅ、しょうがない。少しだけ戦ってやる。」

「あら?勇者ちゃんもやるのかしら。」

「あぁ。」

俺が少し前に出ると、魔方陣が辺りを覆い尽くした。

こっちが近寄る前に潰す気か?

あのステータスのヤツが使う魔法を食らうと、さすがに少し痛そうなので

走って距離を詰める。

「――!」


速度に驚いたようだが、それをきっかけにして六魔を倒したときと

同じような魔法や武器、罠の嵐が迫る。

「ふっ!」

武器は斬り落とす、魔法は回避、状態異常の罠は無視、落とし穴などは

即脱出するだけ。


スターナ自身も転移して逃げるが、律儀に中庭限定で逃げているため、

そう遠くないところに出現する。

「もっとスピードを上げるぞ?」

「くっ!」

俺の速度にどんどん魔法が追いつけなくなる。そして、

「勝ちだな。」

「参ったわ~。負けた事なんてないのだけれど。」


後ろに立って剣を鞘から抜かずに首に当てると、スターナは負けを

認めた。

「強いな。」

「も~、負けた人にそういう言葉をかけるのは嫌味よ?」

本心なんだがな。


「それにしても不思議だな。」

「何が?」

「それだけ強くて、ピクシーの罠にはまって瀕死になった理由が

分からん。」

「あれは酷かったのよ~!馬車で来る予定の使者をビックリさせるために

落とし穴を掘ってたの!」

落とし穴?転移魔法が使えるなら抜け出せるだろ。


「中になんか仕掛けがあったのか?」

「なかったわよ。」

「? よくわからんな。」

「だからね、1mくらいの落とし穴があってはまっちゃったの!」

1m?はまった?


「お前の身長だと腰くらいだろ、何でそうなった。」

「凄い痛かったの。」

……さすがDEF2だな。


話をしているとレフィカが、意気揚々と寄ってきた。

「これで、王の座はアタシの物ね!」

それを聞いて首を傾げるスターナ。


「ちょっと!この戦いで勝ったら王の座を譲ってくれるんでしょ!!」

「ええ。でも勝ったのは勇者ちゃんだから、王様は勇者ちゃんね。

わ~パチパチ。」

「「は?」」

おい、いきなり何を言い出した?


「は、話が違う!」

「違わないわよ~。だって勝ったらって約束なんだから。」

「妾の夫が王様……くふふ。」

遠くにいるのに会話を聞いて意味深な笑いをするな。


「俺はやらんぞ。そんな面倒くさい事。」

「あらあら、フレーグベルちゃんみたいな口ぶりね~。」

一緒にしないでくれ。


「ズギャアちゃん!代理なんだから、その権利を渡しなさい!」

だが、コイツに渡していいのか?国が崩壊するんじゃないか……

いや、この国ならいいような気がしてきた。


騒がしくなってきた頃、中庭と城内を繋ぐ扉が開かれた。

「失礼いたします。」

「どうしたの?ここには入らないようにと伝えておいたはずだけど。」

そこにいたのはメイド。緊急の用らしく急いでスターナに近付き

耳打ちをする。


「……そう、分かったわ。ゴメンね、しばらく休んでてもらって

いいかしら?ワタシは急用ができちゃったから外すわね~。」

そうして中庭を離れていくスターナ。


あの反応から察するに、また厄介事だな絶対。たまにはゆっくりした

一日を過ごさせてくれてもいいと思うんだが。

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