第121話 欲張りマノム

やっと体調が治った俺達は最後の六魔、マノムとやらの城に来ていた。

「ほう。で、それを妾わらわに手伝えと?」

「そうだ。」

「見返りは?」

「さあな。それは他のヤツと相談でもしてくれ。」

「却下じゃ。後で約束を反故にされるかもしれんからの。現物が

いいのう。」


マノムは人指し指と親指で円を作り、金を示していた。

「わかりやすいな。」

「裏切られんのが一番じゃしの。」

「いくらくらいだ?」

「そうじゃの……100万金貨くらいはないとの。」


100銅貨が1銀貨、100銀貨が1金貨だから1金貨を元の世界の貨幣に

換算すると1万円。つまり100億。

「持ってるわけないだろ。」

「じゃあ話はなかった事になるだけじゃ。国の頭をすげ替えるには

安いと思うがの。」

「一応、他の六魔に聞いてきてやるから待ってろ。」

「早うな。」



という訳で、レフィカの城へ。

「金をくれ。」

「唐突ね。でもあの子に渡したくないのよね~、100万金貨なんて。」

「まぁそんな大金、誰にだって渡したくないだろうな。」

「違うのよね。」

違う?何が?


「あの子って欲張りなのよ。要求を通したら、コレなら大丈夫。

じゃあ次は?次も大丈夫……って延々と要求してくるのよ。

やんなっちゃう。しかも自分はドケチだし!」

タチの悪い金貸しみたいだな。俺達も魔石一個を1金貨で

売りつけられたが。

「お金は五人で出し合えば足りるとは思うけど……」

そんな大金、持っているだけでも凄いがな。仮にも王の側近か。


「払えなけりゃ交渉の余地はないそうだ。どうする?」

「え~っとねぇ……説得頑張って!」

「丸投げするな。」

どうもコイツから金を引き出すのは無理っぽい。

しかも他のヤツらもマノムに渡したくないと思ってると聞いた。



マノムの城に戻っては来たものの、どうするか?

「どうだったのじゃ?」

「お前の人望が無いせいで断れらた。」

「ちょ、勇者殿!?」

「お主の人望が無いからくすねられると思ったのかも知れんのぉ。」

「ほぉ?」

「二人していきなり険悪にならないでよ!」

「デュカ、めっ。」

サーシャに怒られた。


「ぷっ!そのような幼子に怒られるとは情けないの。」

「よし。」

「何がよし、なのよ!手を握り込まないで!」

三人が止めに入ってくる。俺はただ頭を叩こうと思っただけなのに。


「ま、どちらにせよ金が無い以上は交渉決裂じゃの。しっしっ!」

まるで動物を追い払うように城から追い出された。



「どうしましょうか?」

俺達は町に下り、食堂で話し合っていた。

「どうもこうも、もういいんじゃないか?六人中五人の協力が

得られたなら一人くらいどうという事もないだろ。」

「そうかもね~。」

「最悪、城ごとフッ飛ばして「トゥカ、もう……ケンカしに来たのでは

ないである。」」

いい案だと思ったんだがな。


「だな。今夜にでも城を攻めてマノムを殺すぞ。」

今、何か聞こえたような。

「勇者殿、また物騒な事ばっかり言って……」

「静かに。」

三人に喋るなのジェスチャーをして、聞き耳を立てる。


「馬鹿、周りが騒がしいからって軽々しく口に出すな。」

「あん?お前が言ったんじゃないのか?」

「何言ってやがる。とりあえず集合は夜中の三時だ忘れるなよ。

俺はもう出るぞ。」

「あぁ。」

俺達の近くで喋っていた内の一人が店を出て行き、少し経つともう一人も

出て行った。


「ねぇ、今のって。」

「マノムの殺害計画だな。」

「大変です。今すぐ城に戻って報告しましょう。」

「慌てるな。」

脳筋を止める。


「さっき集合って言っていたから、仲間がいるかもしれん。まとめて

捕まえた方が 楽だ。」

「楽かどうかはともかく、全員捕まえた方がいいわよね。」

夜中の三時だったな。それまでにどうするべきか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る