第117話 ムイアvsミザウ

「話が面倒になってきてる気がする。もうコイツらを持って帰った方が

早いんじゃないか?」

ムイア達の動きがピタリと止まる。


「いや~……調理してる時に声が聞こえてくるのはちょっと……」

「そのミザウって方のキノコの声が聞こえたら一緒だろ?」

「あ、それもそうね。」

フルフルと震えだすムイア達。


「話を聞いてしまった以上はミザウでしたっけ?そのキノコも見てからでも

遅くはないかと思いますけど。」

まあ、そうかもな。

「それなら早速ミザウってのがいるところを教えてくれ。」

詐欺師がそれを通訳するより前にどこか遠いところでムイアの鳴き声が

聞こえてきた。それに伴い広場にいるヤツらも慌しく動き回り始めた。


「どうしたんだ?」

「仲間が襲われてるらしいよ。助けに行こうか?」

「様子見だけでも行っておくか。」

そうして他のムイアに待っているように伝えた後、四人で鳴き声が聞こえてきた

方へ進んでいった。


しばらく歩くと、

「あ、いました。」

脳筋の目線の先を見ると、離れたところに二匹のムイアとそれ以外に三匹のキノコがいた。そっちがミザウだと思うが、黒くて二倍ほどの身体のデカさにキクラゲ

みたいな頭、足だけじゃなくて手も生えていた。

「詐欺師、両方の言葉が分かるか?」

「うん、大丈夫。それじゃ通訳するわね。えっと



「レオナルド!しっかりしろ!」

「す、すまん……俺はもう、ここまでだ……」

「バカヤロウ!テメェやっと自分の胞子が育ってきたとこだろうが!まだパパと

すら呼ばれてねえんじゃねぇのかよ!?」

「その役目……お前が引き受けてくれないか……?」

「そんなことできるわけねぇだろ!」

「勝手なのは分かってる……でも親友のお前なら……」

「ふざけるなよ!?何を勝手に……おいレオナルド、動けよ、動いてくれよ!

レオナルドォォォォーーーー!!」


そこに近付くミザウ達。

「グギャギャ、死んだみたいだなぁ?可哀想に。」

「なんで、なんでこんな事をするんだ!同じ菌類同士、他の天敵から身を守るため

手を取り合う事もできるんじゃないのか!?」

「……グ、グ、グ、グギャーギャッギャッギャッギャ!!劣等種が何ほざいて

やがる!?」


三匹ともが腹を抱えて?笑い出す。

「俺達は進化して身体もデカくなったし、手も生えた。だがお前らは足だけしか

生えず、天敵が来ても逃げ回るだけ!それでも対等とか抜かすつもりか?

――いい事思いついた。手を取り合ってやるよ、ホレ。」


ミザウの一匹が手を差し出す。

「どうした?こっちは手を出してやってるんだぜ?んん?あ、悪い悪い

お前らには手が無いんだったな。グギャギャギャギャ!」



っていう、やり取りがされてるわ。」

セリフやシーンだけ見れば緊張する場面なんだが、こう……外見がキノコだと

どうしようもなくシュールだ。

この異世界中を探しても、ここまでシュールシリアスな場面はそうそうないんじゃないか?


「どうする?私としてはミザウって方を捕まえて料理するに一票入れるわ。」

「私もそれに賛成です。」

「我が輩も。」

俺も同感だ。

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