第112話 重い腰を上げて到着

急に攻撃されても問題ないように、リリーはアルラウネに任せて階段を上がって

て応接室に出ると、

「誰もいない?」

静まり返っていた。

【見識】で居場所を確認すると屋敷の外に集まっている。しかもさっき連中を

数えた時より十人程増えている。


まぁいいか。メンバーが全員いてくれた方が一網打尽にできる。

「出てきても構わんぞ。」

「わかったわ。」

「ウン。」

エルフとアルラウネも階段を上がって部屋に出てくる。


屋敷の入り口前まで移動して、扉を少しだけ開けた隙間から外の様子を伺う。

さっき地下に下りてこなかったヤツらが誰かと話しているな。

先手必勝で殴り倒した方が早いか?

「なにしてるのよ?」

エルフが後ろから覗き込んできた。


「邪魔だ。離れて待ってろ。」

「別にいいじゃな――きゃ!」

足を滑らせて、大声出しつつ扉を全開にしやがった。


「何だ!?」「お前らは!?どうやって抜け出してきやがった!」

見つかった……

「あはは……どうしよう?」

あはは、じゃない。攻撃が飛んでくる前に走り寄ろうとしたが、

「動くなよ?動いたらコイツらを殺すぞ!」

人質を取られた。


どうやら新しく増えていた十人中、二人は新しい奴隷だったらしく、

縄で縛られて身動き取れない状態の女の首にナイフが当てられた。

「ひっ!」

どうする?サーシャが待機してるから薬を使ってくれるのを待つか、

俺がさっさと終わらせるか。


悩んでるのを手も足も出ないと思ったらしい奴隷商人の仲間は、気持ち悪い笑顔を

浮かべてこちらを見てくる……ん?影が動いてる?

どうやら誰も気付いていないが、影がゆらゆらと動きまわっている。

そして、

「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」「あがっ!」「な、何が!」

一気に膨らんだと思ったら、奴隷商人の仲間に絡みつき骨の砕ける音や悲鳴が

聞こえた。


「ふう、外に出るのは疲れるんだけどな。」

声のした方に目をやると、歳は俺と同じくらいで金髪碧眼の青年が立っていた。

「誰だ?」

「やだなあ。一度会ってるじゃないですか?」

まったく覚えがないが……後ろに誰かいる。あれは……脳筋?


「勇者殿!大丈夫でしたか!?」

脳筋と一緒だとすると、まさか……

「お前、フレーグベルか?」

「そうだよ。」

成長し過ぎだ。


「どうなってる?一晩で何年分もの歳を取ったわけじゃないよな?」

「まさか違うよ、夜だからだよ。」

「どういう意味だ?」

「吸血鬼だからね。夜になると本来の力や姿に戻れるんだ。疲れるから普段は

戻らないけどね。」

吸血鬼にそんな能力があるなんて初めて知った。


「僕のメイドを拉致したのはコイツら?」

「ああ。家の地下にあと四人いる。」

「そっか……良ければ処分は任せてもらえない?」

「好きにしろ。俺はメイド達を連れて先に帰るぞ。」

サーシャは少し離れた位置で待機していた。なんでもコウモリが飛んできて、

フレーグベル自身が手を下すから、何もしないで欲しいと言われたと。

コウモリを操る能力は有名だし知っている。さすが吸血鬼。


脳筋とサーシャ、そして裏口にいる詐欺師と合流。エルフとアルラウネ、

さっき連れてこられたばかりの二人、それにリリーを連れて城に戻った。

「リリー!良かった無事だったのね!」

「エ、エレナ様……うわぁぁぁぁぁ!!」

城の入り口で待っていたエレナが駆け寄ってくると、リリーが大声を上げて

泣き出した。それほど恐怖だったのだろう。

他のメイドに捕まってた二人の事情を説明して、任せた後は俺達も休憩した。

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