第111話 脱出

奴隷商人が先頭に立って階段を下り、俺がその後ろを付いていく。

さらにウルクと人間二人が続く。

俺との距離を考えると、ウルクを前衛として人間が魔法か飛び道具による後衛と

した組み合わせだろうと予測する。


少し深いところまで来ると通路があり、牢が用意されていた。

【見識】では場所の高低も見れないので気付けなかったのが残念だ。

「今は数が少なくてな。三人しかいない。」

「順に見せてくれ。」


そうして、最初の牢を覗くと中にいたのは金髪碧眼の耳が長い種族――エルフ。

両腕・両脚を頑丈な枷で押さえつけられ、猿ぐつわを咥えさせられているので

言葉を発せないようだが、憎しみの目でこっちを見てくる。

「この種族は人気が高くてな。お前が持ってきた金でも前払いにしかならん。

買いたいなら追加で700金貨というところだ。」

「いや、こいつはいい。次だ。」


二番目に見たのは上半身が人間、下半身が草木だった。

「こいつは?」

「アルラウネを知らないのか?見てのとおりの魔族だよ。」

枷はされていないようだったが、全身にヒビが入ってピクリとも動かない。

「拘束されていないようだが?」

「水分を飛ばして、補給しないでいると動けなくなるのさ。人気薄いからな。

即金なら80金貨ほどにまけてやるが、どうする?」

なるほど。まあ後で水魔法を使ってやるとして今は、

「最後の奴隷を。」


三番目の牢は部屋の一番奥にあり、中を見ると入れられていたのは、

「うっ……ひっ……」

青髪のショートヘアーでメイド服を着た人間。

「こいつは以前に俺が売ってやったはずなんだがな。とぼけた顔で道を

歩いてたから、つい持ってきちまった。中古品だから40金貨でいいぜ?」

当たりだ。


「一つ頼みがあるんだが。」

「何だ?」

尋常じゃなく腹が立っていて上手く手加減ができそうにない。

「死ぬなよ?」

「あん?」

返答を聞く前に腹を殴り飛ばした奴隷商人は悲鳴を上げる事もなく、通路の

端から端まで吹っ飛んで行った。


「な、テメ」

喋りだそうとしたウルクのひざを前から蹴ると鈍い音ともに逆側に折れた。

その時に前に倒れ込む形になったので思い切りアッパーを食らわると、

俺の身長近くまで浮いた後、地面に落ちて動かなくなる。


「ひっ!」「か、風よ!悠久に――ギャッ!」

魔法を唱えようとしてきた方にウルクを蹴飛ばしてぶち当てると、5mほど

地面を転がっていき、もう一人は近寄って顔面を壁に叩きつける。

最初に殴った奴隷商人は力を入れ過ぎたと思い調べると、案の定瀕死だったが

後で聞く事があるため、回復してやった後にもう一度気絶させた。


上から応援が来る気配もなかったので、近場にある牢から壊して

捕まってるヤツを助ける事にした。奴隷商人の近くに寄ったからエルフからだな。


牢を思い切り横に引っ張ると、ひしゃげて隙間ができたので、中に入って

枷と猿ぐつわを外す。

「げほっげほっ!」

「大丈夫か?」

「大丈夫なように見える!?」

「それだけ元気なら問題ないだろ。他のヤツも逃がすから付いて来い。」

「ちょ!?待ちなさいよ!」


俺は次のアルラウネの牢を壊した後、エルフに質問をする。

「お前、水魔法は使えるか?」

「ええ。」

「だったら水をやっといてくれ。」

「あなたは?」

「もう一人を助けておく。」


エルフを助けた時と同じようにして、メイドを助け起こす。

「お前がリリーか?」

「う……あぁ……」

トラウマの話は聞いていたが、牢に入れられたせいで再発したのか

まともに話せない状態だった。

さっさとこんなところを出て行くべきだなと結論付けたので、メイドを抱きかかえ

他の二人の元へ戻った。


「ア、アリガト」

アルラウネが動けるようになって、顔を合わすなり礼を言われた。

「礼ならエルフに言っておけ。それよりさっさと出るぞ。」

「ちょっと待って!外には他にも仲間がいるんでしょ!?」

「あの程度なら問題ない。」


躊躇する二人に付いてくるように言って、階段を上がり始める。

こんな場所に長居したら、ストレスで屋敷ごと消滅させそうだ。

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