第109話 路地裏

さっき食堂で話した情報を元に店を回ってみるが、

「いや、来なかったと思うがねぇ……」「ウチでは買い物してないぜ。」

どこも知らないという返事しか来なかった。


「どうしよっか?」

「結構な数の店を回ったはずなんですけどね。」

「これだけ聞いて知らないとなると、別の方向から捜した方がいいかもな。」

「別の方向?」

「つまりどこかの店を回ってる最中じゃなく、その前にいなくなった。」

「そうね。」

「なら、リリーがこの町に着いてからすぐに何かに巻き込まれた可能性が高い。

町に着いてすぐに手分けしたと言ってたから、フレーグベルの城がある方面の

入り口付近で人気のない場所を捜すぞ。」

俺達は移動する事にした。



「うぇ~……」

「あまり歩きたくはないである……」

入り口付近からかなり奥まったところだったが、浮浪者の溜まり場があったので

歩いてみる事にした。


「なんかじろじろ見られてない?」

「変わったヤツが自分の縄張りに入ってきたら警戒するだろうな。」

「何か起こっても対処できるようにしておきましょう。」

道は薄暗く、吐瀉物としゃぶつやゴミがあり、空気もよろしくはない。

そこにいるヤツらの目は据わっていたり、虚ろだったりしているが共通して、

値踏みされているような気分になった。


「ここは外れか……?」

もしかしたらと思ったが、こんなスラムみたいになってる場所があるなら、

城の連中も知っているはずだし、真っ先に調べるだろう。

そう思って引き返そうとしたすると、


「なあ、金くれよ。」

声を掛けられた。フクロウの頭に熊の身体を持ったのとオークをさらに

デカくしたようなのの二人組だった。


「オウルベアとウルク……どちらも力自慢の魔族です。」

脳筋が小声で耳打ちをしてきた。

なんでこの世界は基本的に力任せに攻撃してくるようなのしかいないんだろうか?


「聞こえなかったのか?金をさっさと出せよ。」

「くれてやったらどうなるんだ?」

「半殺しで済むな。」

ニタニタと顔を歪めながら笑っている。

「……ちなみに拒否するとどうなるのかしら?」

「全殺しだ。」

予想はできたが、そのまま過ぎて面白みもない。


「ヅギャア、やっちゃいなさい。」

詐欺師に言われるのもなんだが、どうせやるつもりだったし前に出る。

「おいおいチビちゃんよ。お前だけで」


その先の言葉を発する前にオウルベアが前のめりに倒れる。

「お、おい!?何しやがったテメェ!」

「殴っただけだ。見えなかったか?」

ウルクが目を見開き、両手を組んで上から叩き付けるように攻撃してきた。

それを片手で受け止めると石畳に少しヒビが入った。


「もうパターンすらほとんど変わらんな。」

大体が叩き付けるか横に薙ぐかだ。身長差があるから同じになりやすいん

だろうが……

どうでもいい事を考えつつ、ローキックをかますと半回転して

地面に倒れ込んだウルク。


「イギャッ!!」

そのまま顔を気絶しない程度に踏みつける。

「質問がある。ここにフレーグベルの城のメイドが来なかったか?」

「し、知りません!!」

そのまま力を入れていく。

「ぐぅぉっ!本当です!」

「じゃあ、それ以外で変わった事は?」

「がっ……!変わった事……そ、そうだ!最近は見なかった奴隷商人を昨日

見かけました!」

奴隷商人……


「そいつはどこへ?」

「町の外れにあるデケェ家に向かって行きました!!」

「その事を城のヤツには伝えてないのか?」

「あ、あの城にいるヤツらは奴隷商人を毛嫌いしてるから、下手に関わると俺らも

ヤバイんです!」

そこまで喋らせて、足を外してやると仲間を見捨てて一目散に逃げ出していった。


「ヂュキャにケンカ売るなんて命知らずよねぇ……」

「初対面じゃわからないであるから仕方ないである。」

火の粉を振り払っただけなのに呆れられるのは納得がいかんな。


まぁいい。目的地が決まったみたいだ。

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