第110話 メイドはいるのか?

町外れの屋敷を訪ねる頃には、ほとんど日が落ちていた。

「ここまで来たけど、どうするである?」


【見識】で調べてみたが、どこかに固まったまま動かないという事もなく、

奴隷かどうかは確信できなかったので、

「出番だ、詐欺師。」

「はいはい、わかってますよ~。」

様子を見てきてもらう事にした。


詐欺師が家の周りを飛んでいたが、しばらくすると姿が見えなくなった。

どうやら侵入したらしい。

「リリーさん、無事だといいんですが……」

「一日で売られる事はないと思うがな。」

特に何もやる事もないので、家から離れた場所で待っていた。


どれくらい経ったかわからないが、完全に日が落ちきって辺りは暗くなった時、

「ただいま……っと。」

「時間がかかったな。」

「いや~隅々まで見てたら遅くなっちゃって。でも……」

「でもなんだ?」

「メイドっぽい子はいなかったのよね。」


いなかった……どこかに監禁されているだけなのか、それとも本当にいないのか?

【見識】がもう少し使い勝手のいいスキルなら良かったが。

こうなったら出向いた方が早いか。


「ちょ、どこ行くのよ!?」

「詐欺師が見つけられなかったなら、隠し部屋とかがあるかもしれないだろ?」

「……どうする気?」

「屋敷をぶち壊せば「絶対止めなさい!」」

三人がかりで止められて却下された。代わりの案は……




コンコン……


ドアをノックして、しばらく経つと扉が開き、

「誰だ?」

いかにも怪しげな男が出てきた。


「買い物の話がしたい。」

「買い物?」

男は俺を上から下まで眺める。


「一体、何の話だ?」

「なに、アンタが奴隷商人と聞いてな。今は品切れか?」

「……金は?」

ヨーグから貰ったばかりの100金貨を見せる。


「どうだ?」

「……入りな。」

そうして俺は屋敷に侵入した。


三人と話した案は、俺が奴隷を買いに行く役、入り口と裏口の見張りに二人、

後の一人は魔石を使ってフレーグベルの城に行き、状況を伝えるというものだ。

入り口はサーシャ、裏口を詐欺師が見張り、脳筋が伝令役になった。

サーシャと詐欺師は薬と魔法があり、多人数相手に向いてるからという理由だ。


案内された俺は、応接室に通された。

部屋の前には用心棒なのか、オーガが二人いて武器を預けたがたいした問題

じゃない。

中に入ると別の種族が七人。

部屋の四隅それぞれに人間、奴隷商人が座ったソファーの横にオーガが二人、

俺が座ったソファーの後ろにウルクが一人だ。


「まずは、これに血を垂らせ。」

契約書のようなものを差し出された。【鑑定】を使うと、


【呪いの契約書】

契約書の内容を破った場合、状態異常【衰弱】にかかり死亡する。


中に入るのが簡単過ぎると思ったが、コレがあるからか。

内容は、誰にもバラすなとか買った以上は共犯だ、などお決まりの文章が

書いてあったので、さっさと指を噛んで血を垂らした。

どうせ効かんしな。


奴隷商人は契約書を受け取ると、

「閲覧料だけで10金貨貰おう。気に入ったら買い取りで奴隷ごとに金額が

変わる。」

いきなり金の話をしだした。

裏でこそこそ動いてるとしたら変な詮索はするのもされるのも嫌うんだろうと

思い、こちらもさっさと話を進める。

「これでいいか?」

10金貨を机の上に出すと奴隷商人が手に取る。


「本物だな。じゃあ行くか。」

そう言われたので応接室を出るものかと思ったら、部屋にある暖炉の上の燭台しょくだい

捻るとゆっくりと目の前の机がずれていき、地下への隠し階段が現れた。

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