第103話 原因の元へ

サーシャのステータスを速攻で確認したが、

「操られていないか。」

「何の事であるか!?」


俺の方向に走ってこようとしたが、俺も同時に走り出してサーシャを抱きかかえ

そのまま壁をぶち破って外に脱出した。

「壁を壊していいであるか!?」

「緊急事態だ大目に見てもらうしかないな。」

それより、あれだけ派手にやらかして誰も部屋から出てこなかった方が

問題だろう。

おそらくは……


「いた。」「アイツらだ。」「宿から逃げ出してるぞ。」

やはりこうなったか。俺とサーシャの周りを人が囲んでくる。

その中には昼間見た大道芸人、薬屋の店主、宿の主人などもいた。


「殺せぇぇぇぇぇぇ!」

誰かが発した言葉を皮切りに全員で襲ってきたので、

「水よ。深き生命の源よ。幾たびも「させないわよ。」」


チリィン!ドオオォォォン!


ジャンプして民家の屋根に降り立つ。

「非常に邪魔なんだが。」

「だって邪魔してるもん。」

人間相手なら手加減もできるようになってきたが、妖精相手じゃ無理か。

仕方なく暗がりに逃げ込み原因を考える。


全部の家や店に壁を開ける訳にもいかず走り回ってる俺たちに、詐欺師は空から

好き放題やってくるので、面倒くさい。

「ジュグア、大丈夫であるか?」

「俺は問題ない。」

どうして脳筋と詐欺師は操られて、サーシャは無事なのか?何の違いがある?

それに魔法をかけても状態異常が解除されなかったのも何故だ?


「む~……」

「どうした?」

「なんか昼間よりも嫌な感じが……へくちっ!」


チリィン!ドオォォオン!


おっと。くしゃみで攻撃する場所を調整するなよ。

「鼻がムズムズして……む~……」

「少し我慢しててくれ。」

「この町に来てからずっと鼻の奥が変な感じするである。」

鼻の奥?……もしかして匂いが原因か?匂いで操られてるなら、一度解除しても

すぐに状態異常になってるから、魔法が効かないように見えるだけかもしれん。


俺は何も感じないとなるとサーシャは嗅覚が鋭いのかもしれない。

「サーシャ、匂いを感じる事ができるか?」

「無理である。朝から鼻が働かないである。」

「朝から?」

「あの薔薇が咲いてる庭園に着いてからである。」

「もしかして大量に引っこ抜いたり、観察してたのはそのせいか?」

「である。鼻が利かないから感覚が狂って、どんな薬ができるのか

わからなかったから、試作用に必要だったである。」


サーシャの薬作りが嗅覚頼りとは知らなかったが、おかげで原因は

特定できそうだ。

俺は、サーシャを抱きかかえたまま城に向かった。



「着いたか。」

「速かった……」

前にサーカス団を探すため、サーシャを抱っこしながら走った時の事を

思い出してるみたいで少し震えている。

詐欺師と町の人間は速めに走るついでに撒けたみたいだ。


「これはこれは勇者様。どうされましたかな?」

アッセムドゥがホールの上から入り口にいる俺達に問いかけてくる。


「薔薇を見せろ。」

「用件だけを端的に言われると、相手に圧力を与えるものですぞ。」

「知った事か。見せる気がなくても勝手に行くがな。」

庭園に向かおうとしたが、階段を下りてきて俺たちの前に立つアッセムドゥ。


「何であんな物を栽培している?」

「簡単ですよ、アレを食した相手は自分では意識すらしていない匂いに反応し、

言う事を聞くようになります。そうしたら私の手足となり死ぬまで働いてくれる

上に、 催淫薬としての効果もありましてね。毎夜、理性が飛びかねないほどの

快楽を与えてくれるのですよ。」

変態野郎が。


「俺を殺そうとした理由は?」

「お連れの方々……全員、女性でしたよね?頂こうかと思いまして。」

「それだけか?」

「もちろんです。」

「サベルの手先じゃないのか?」

「どなたか存じませんが、すべて私の意志でございますよ。」

あいつとは関係なかったか。だが今はそんな事より、


「残念だが、お前みたいなクズに俺の連れをやる気はないし、

迷惑かけられたからな。半殺しにするがいいだろ?」

抱きかかえていたサーシャを下ろして、前に出ながら宣戦布告する。

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