第104話 異常解決

アッセムドゥがうつむき、肩を震わせる。

「ふ、ふふふふふ……」

「気でも触れたか?」

「いえいえ、勇者様の冗談があまりにも面白くてつい。」


笑い続けていたがアッセムドゥだったが、そのうちに身体が大きくなっていき、

服が破れていく音が聞こえる。

元の人間に近い姿のまま大きくなっていくのではなく、緑色をして爬虫類のような

皮膚と顔を持ち、前に戦ったサイクロプスと同じくらいの大きさまで巨大化した。


「勇者といえど、たかが人間。その人間が俺を半殺しにしてやるなぞ……

クックック、ハァーハッハッハ!笑えねぇ冗談かましてんじゃねぇよ!!」

「笑ってるだろうが。」

でかくなって口調も態度も大分変わった。こっちが素か。


「んなこたぁどうだっていいんだよ!とりあえずテメェは死ね。」

右手で薙ぎ払ってきたので、左足を蹴り上げた。


メキャ!


「ギャッ!」

「この世界の図体がでかいヤツらは、体格に物を言わせて殴るだのしか脳が

ないのか?ほとんど似たような攻撃しかしてこないな。」

「っ!舐めてんじゃねぇ!」

口を開き液体を吐き出してきたので懐に飛び込む。体格差があるため、

攻撃はそれで避けられるので、ついでにジャンプして前蹴りを腹に叩き込む。


「ブフッ!」

ドゴオォン!

声を上げながら後ろに吹っ飛び、壁に激突したので近寄っていった。

「お前は通常の攻撃とさっきの酸による攻撃しかできないよな。」

「……!」

「俺には当たらんし、当たったところで少しくらいのダメージにしかならん。」

「く、来るな!!」

「つまり……詰みだ。」

「来るなぁーーー!」




「ん……あれ?ここは……」

「ようやく起きたか。」

脳筋がベッドから起き上がってきた。


「勇者殿?なんで私達の部屋に……ってどうしたんですかコレ!?」

部屋のドアがえぐれて、その向こうに広がる惨状を見て叫ぶ脳筋。

「さぁな。」

「え、本当にどうなってるんですか!?」

この様子だと昨日の記憶はないらしいな、ありがたい。


アッセムドゥの館から戻ってきた時に道端で倒れていた住民に混じって詐欺師も

いたので回収して宿に行き、眠った。

詐欺師の暴れ方が派手だったせいで宿は半壊していたが、運よく部屋は

入り口が壊れただけだったので問題なく使えた。

外も騒がしくなってきたので住民達も起きてきたのだろう。


「酷い状態だったわ……何があったのよ。」

詐欺師も起きたので、騒がしい外の様子を見て回ったらしいが、民家や道路が

穴だらけになっていたと報告してきた。いや、お前がやったんだがな?


「勇者殿、なにか知りませんか?」

「なんで俺に聞く。」

「アンタが何か隠してそうだからよ。」

「何も知らん。」

「ホントに?」

サーシャの視線がこっちを捉えてるような気がするが気のせいだろう。


二人がギャーギャーと言ってきたが知らんフリを続けてたら、アッセムドゥに

報告に行った方がいいという話が出たので、四人で城を訪れた。


「!? ん……ふひゅー!こふ!」

「……勇者殿。」

「……チュギャ。」

俺がぶん殴りすぎたせいで三倍以上に膨れ上がった顔と身体、それに包帯で

グルグル巻きの状態になっているアッセムドゥを見て悟ったような目を

こっちに向ける脳筋と詐欺師。


「何したんですか!」

「なんで俺に聞く。」

「こんな事できるのアンタしかいないでしょ!」

「何も知らん。」

「さっきとまったく同じ受け答えしてんじゃないわよ!

そうだ、サーシャは何か知らない?」

「我が輩は何も見てないである……」


遠くを見つめるサーシャに、二人は何かを察したのか同時にため息をついた。

そのリアクションはイラッとくるな。

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