第100話 三人目の六魔
翌日の朝、
「ねぇ勇者様。」
「なんだ?」
「クックルにいる大臣さんから資金が届いてるわよ。」
「もうか?速過ぎるだろ。」
「ヨーグ大臣も一生懸命でしたからね、いろいろと……」
脳筋が遠い目をしている。俺とコイツが出会ったのも元はヨーグの悪巧み
だったな。
レフィカから資金を受け取り、荷物を整えて準備完了。
「もう転移してくれて構わんぞ。」
「それじゃちゃちゃっと行ってらっしゃ~い。」
魔石が地面に叩きつけられた。
ヒュン!
「ここは?」
「ようこそ我が城へ!歓迎いたしますよ。」
俺達はレフィカの城に転移した時と同様に、城の入り口に転移させられていた。
声を掛けてきた男を見ると、背は高いのに痩せこけていて細長いという印象の
初老の男だった。
肌は人間と同じ肌色で髪は金髪だ。
「お前がここの主か?」
「その通りです。我が名はアッセムドゥと申します、以後お見知りおきを。」
そう言って一礼するアッセムドゥ。
「今度はちゃんとしてそうな人ね。」
それはどうかな?まともだと思ったら変なヤツもいたしな。
「レフィカから勇者様のお話を聞いて欲しいとうかがっております。
立ち話もなんですから、こちらへどうぞ。」
促されて、後を付いていく。
レフィカの城でも思ったが、中々にデカイ割に人の気配が少ない。
清掃や雑務に必要な最低限の人数しか確保されていないのだろうか?
アッセムドゥに案内されて着いたのは、辺り一面に白い薔薇が咲き乱れる
庭園だった。
「うわぁ!凄いです!」
「綺麗~!それにいい匂い!」
「新しい薬の材料……」
一人違う感想を持ってるのがいるが、突っ込むのはやめておこう。
「ハハッ、気に入ってもらえて何よりです。なんなら、いくつか摘んで
持って帰って頂いても結構ですよ?」
「あ、いえ、こんな立派に咲いてるのに摘むなんて申し訳ないです。」
「心配いりませんよ。この薔薇は非常にたくましいので、いくつか抜いたところで、しばらくすれば生えてくるのですよ。」
それを聞いて脳筋と詐欺師は持って帰ろうかどうか迷ってる。
サーシャは……もう大量に抜いてバッグに詰めてる。
「先にお茶でも用意いたしましょう。」
壁に寄り添うようにして気配を消していたメイドを呼びつけて
お茶を入れるように指示した数分後、
「どうぞ。これは自慢の一品なんですよ。」
メイドが持ってきたお茶は甘い香りがした。
「実はこのお茶も、ここに咲いている薔薇を使っていましてね。どうです?
あまり飲み慣れない味かと思いますが、クセになるでしょう?」
「ほんのり甘みがあるけど、スッキリした飲み応えで飽きませんね。」
「おいし~。私達もいくつか貰ってお茶作ってみる?」
二人はお茶を持ってこられた時点で席に着いていたが、サーシャはまだ
薔薇を引っこ抜いたり、観察している。薬師の血が騒ぐのだろうか?
このままでは話に参加しそうにないので、近くに寄って抱き上げ、
ヒザの上に乗せると大人しくなった。
「それで話というのは?」
「実はな……」
アッセムドゥにレフィカからの話を伝える。
「反逆とは穏やかではありませんな。」
「まぁ俺達も無理に進めるつもりはない。ただ、この国の王様に立場を自覚して
ウロチョロ動き回るなと説得してみる気だ。」
「そうですか。」
そう言って考えていたが、どうやらすぐに結論は出なかったみたいだ。
「申し訳ありませんが、少し時間をいただけますか?」
「ああ。いきなり初対面のヤツが来て反逆の手伝いをしろと言われても
そう簡単に納得できないだろうからな。」
「では、せっかくですので今日はこちらに泊まっていってください。
部屋も用意させますので。」
そうして俺達はアッセムドゥの城に泊まる事になった。
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