第99話 ラテニヴァとの戦い

「そっちから挑んできたのだ。死んでも文句は言うまいな。」

「安心しろ。お前じゃ殺せん。」


一応、ステータスを確認しておく。


ラテニヴァ Lv35

HP:1020  MP:0  ATK:121  DEF:134

INT:43  MGR:32  DEX:125  LUC:99

スキル

【鈍器の心得】【気合】【魔法ダメージを物理ダメージに変換】


脳筋と同じニオイしかしない。


「ぬうん!」

デカブツは側においてあった、鉄製の棍棒を振りかぶって潰そうとしてきた。

それを身体を捻って避ける。床に使われてる石が砕ける。


ドォン!

「あ~!」

レフィカの悲鳴が聞こえるが無視だ。


「ちょこざいな!」

今度はそのまま横薙ぎに払ってきたので、バックステップでかわす。

柱に当たって、砕け折れる。


ボゴォッ!

「いや~!」

「どうした?棒切れを振り回すしか脳がないのか?」

「言わせておけば!!」


ビュァオ!


デカブツがまた横薙ぎに振ってくるかと思ったら、ブーメランでも投げるように

棍棒を投げてきた。

当たれば大ケガ確実、避けたとしても追い討ちをかけるつもりでいたんだろう。

「なっ!?」

俺が受け取らなければの話だが。

「お次は?」


「ガァッ!」

左足で蹴り上げてきた。動揺してもすぐに立て直すあたりは戦い慣れしている

みたいだが、

「返すぞ。」


ブン!メキャ!

「がはぁっ!」


蹴りなぞ気にせず、棍棒を投げ返してやった。

「もう終わりでいいよな。」

「ぐ……ぐうぅぅ!がふっ!」

肋骨でも折れたのか血を吐き出したので、回復魔法をかけてやる。


「キサマ何者だ!?ただの人間がこんなに強いわけがない!」

「勇者殿ですし。」

「チュギャだし。」

「ヂュクバであるから。」

「アタシの城なのに~……」

外野がうるさいな。


「これでお前よりは強いのが決まったわけだが、まだ文句あるか?」

「……いや、ない。」

デカブツがうなだれている。力勝負で負けたのが悔しかったようだ。


「じゃあこれで話も済んだな。さっさと魔王の情報を教えろ。」

「え~まだダメよ~。それは全部片付いてから教えてあげる。」

「全部ってのは?」

「もちろん、スターナ様の件を片付け終わるまで。」

むしろコイツらを倒して聞き出した方が早くないか?


「大丈夫、ちゃんと約束は守るから。」

「本当だろうな?……俺達は何をすればいいんだ?」

「そうね~他の六魔のメンバーに話をしてきてくれるかしら。勇者自身から

アタシ達の仲間になったって言ってもらえたら重い腰も動くだろうし。」

「待て、反逆はお前ら全員の意思じゃないのか?」

「今のところ、アタシとラテニヴァだけよ。」

先に話くらい通しておけよ!


「しょうがない。次のヤツがいる町の行き方を教えろ。」

「それなら転移用の魔石があるから今はゆっくりしてていいわよ。」

助かると思ったが、そのくらいはやってもらわなきゃ割りに合わんな。


翌日に出立する事になったので、今日はレフィカの城に泊まった。



~ヴァファール王国にて~


夜、姫が自室で休んでいるところに大臣がノックしてきた。

「姫!姫!勇者殿からの手紙が届きましたぞ!」

「本当!?」


大臣にドアを開けて中に入るように促し、ひったくるように手紙を受け取る。

姫は自分の手で封を開けて中身を見る。


「勇者様はもうイオネ王国にいらっしゃるみたいね。

どんな方法を使ったのか分かりませんが。」

「おお、もうそんなところまで!さすが勇者殿ですな!」

「それにこの拙い字……私に手紙を送るために頑張って書いていただいたのが

ひしひしと伝わってきますわ。」

「姫も罪作りですなぁ!」


姫と大臣が揃って笑い声を上げた。


「あら?大変!勇者殿の持っている資金が少なくなってきたそうよ!

ヨーグ、すぐに用意して!」

「なんと!わかりました。100金貨ほどお送りしましょう!で、どこに?」

「……どこでしょう?」

「少し失礼を。」


大臣が手紙を横から見る。


「次の目的地は六魔の方がいるところとなっていますな。ワミ団長の話だと

クアーズ方面に抜けたそうですから、そこに一番近い城をお持ちの方は……

レフィカ殿ですな。六魔の方なら我が城からの緊急連絡とでも言っておけば

品物を直接転移させても問題はありますまい。」


大臣は手紙を姫に返し、姫の自室を後にした。

そして廊下を走っていると、王に出会った。


「どうした、そんなに慌てて?」

「実は……」

勇者からの手紙の内容を報告した。


「勇者殿はずいぶんと足が速いのだな。」

「とりあえず急いで資金をお送りして差し上げないと!ではこれで!」

大臣は王を置いて走り去っていった。


「ふむ……さっさと次に進んでくれたか。よかったよかった。」

王の口元には微笑みが浮かんでいた。

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