第88話 謎の妖精とベル
脳筋は自分の武器を探し始めた。
「ん~……これはちょっといいかも。でも強度が……あ!これ格好いい!」
いろいろ迷いながらも楽しそうに選んでいる。
「やっぱり自分の武器を見るのは楽しいのであるか?」
「普通の女の子ならオシャレとか甘いものに目が行きそうだけどね。」
脳筋はどこまで行っても脳筋だからな。
「妖精のお嬢ちゃん、今思い出した物があるんだが。」
急に店主が話しかけてきた。
「何?」
「コイツだよ。」
そう言ってカウンターの上に出されたのは、
「ベル?」
呼び鈴の役割を果たすベルだった。しかし、やたら小さい。
詐欺師が腰にぶら下げられるくらいの大きさだ。
「コレがどうしたっての?」
「それがなあ、わかんねぇんだ。」
「それじゃ私にも分からないわよ。」
「いやな……」
店主が話すにはこうだ。
二ヶ月ほど前、一人の妖精が訪れてきた。
「すみません。」
「らっしゃい。と、フェアリーとは珍しいな。」
「お気に障ったら申し訳ありません。」
「ああ、悪い。こっちも別にそんなつもりで言ったんじゃねぇんだ。
この国じゃピクシーの方が多いからな。」
「そうですか。」
そのフェアリーはカウンターに近付くと、
「コレを買い取っていただきたいのです。」
「これは、ベルか?悪いが雑貨屋じゃないんでね。他を当たってくれや。」
「これでいかがでしょう?」
買い取るって話だったのに、そのフェアリーは10金貨を出してきた。
「おいおい、こんなん受け取れんよ。」
「どうしても買い取っていただかなければいけないのです。お願いします。」
「……分かったよ、引き取ってやる。その金もしまっとけ。」
「ありがとうございます。」
そうして店主は鑑定して代金を払おうとしたが、
「では、失礼いたしました。」
と言い、すぐに店を飛び立とうとした。
「待ちな、俺があんたに代金を払ってねえだろ。」
「そうですね……なら、お店にフェアリーが来たら渡してあげてください。」
「ちょ、おい!」
今度は止める間もなく、後を追おうにも影一つ見当たらなかった。
「行っちまったよ。なんだってのかね、まったく。」
「て、事があってな。お嬢ちゃんには、このベルが何か分かるかい?」
「いや、う~ん……え~?」
どうやら詐欺師にも心当たりはないらしい。
「俺が見ても構わないか?」
「どうぞ見てくれ。だが、壊さんでくれよ?」
棍棒振り回してたからか、そんな忠告を受ける。
別になんでもかんでも力に物をいわせた訳では……ない事にしておこう。
俺は【鑑定】でベルを見た。
【神秘のベル】
神聖な力が込められた武器。
MPを消費することにより、狙った相手を攻撃する事ができる。
威力はMPの消費量に比例する。
「ほう。」
「なにか分かったであるか?」
「これは妖精用の武器らしい。MP……精神力を消費して攻撃できるらしい。」
「え?武器なの?」
詐欺師が手に取ってまじまじと見つめる。
「試してみたらどうだい?お嬢ちゃん。」
「じゃあ、いつもの恨み~食らえ~ってね。」
チリィン。
ドォン!!
詐欺師が俺にベルを振るった。
冗談だったのだろうが、ベル特有の綺麗な音が鳴った瞬間に俺は吹っ飛んだ。
武器屋の棚がメチャクチャになって、壁にもへこみができた。
だが、そんな事よりも……
俺のHPが11も減っただと!ドラゴンの攻撃ですら7しか減らなかったのに!?
その事実に驚愕していると、
「ヅギャ!大丈夫!?」
詐欺師が慌てて飛んでくる。サーシャと脳筋も心配らしく走り寄ってきた。
「ゴメンね!本当にゴメン!」
「リュリュ、いくらなんでもやり過ぎである!」
「勇者殿、お怪我は!?」
「ああ、問題ない。」
無事な姿を見て安心する三人。
「すまん。片付ける。」
「いや、煽ったのはこっちだしな。放ってくれて構わんよ。」
店主も自分のせいで悪い事になったと思ったらしい。
HPが11減ったくらいでは死なないから問題はない。問題はないが、
「覚悟はいいか?」
「デスヨネ~……」
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