第87話 武闘大会の準備
食休みも終わって店を出ようとしたところに、店主が包みを渡してきた。
「あの、コレどうぞ。」
「これは?」
「店のまかない料理です、先ほどのお礼も兼ねて夜ご飯にでもと思って。
あの、武闘大会に出るなら頑張ってくださいね!応援してますから!」
それだけ言って、店の奥に入っていく店主。
「ぬふふ、隅に置けないねぇ~。」
「……何の話だ?」
「分かってるくせに、もうあの人はチュカにホの字ですぜ。にっくいねぇ、
このこの~。無愛想なくせに女殺しだねぇ。」
詐欺師が肘で頭を突いてきた。
「ずびばぜんでじだ……だじで……ぶぇっくしょおい!」
前、ピクシーにやったように、袋に詰めて魔法で作った氷の上に放置した。
さらに数分後、
「あ~……そこの若いの……温かいお茶をくれんかね……?」
「リュリュがお婆ちゃんみたくなったである。」
袋から出したら老けた詐欺師がいた。
「……死ぬかと思ったわ。」
「そうか。」
「なんでアンタはやりきった顔してんのよ!どうせ私にはまだ試して
なかったから、やれて良かったとか思ってるんでしょ!?」
「お前のこういう時の勘は百発百中だな。」
「ウッキャー!」
猿か、お前は。
「二人とも、じゃれてないで武器屋に行きましょう?」
「じゃれてないわよ!!」
喋りつつ目的の店まで歩いていった。
「らっしゃい。」
「さて、どんな武器にしましょうか?」
「自分の武器はいいのか?」
「先に勇者殿のを選んじゃいましょう。じゃないとまた変な事しそうですから。」
コイツも言うようになったな。
「ひひゃひ~……」
「アリアがやられるの久々に見た気がするわ。」
「頬の肉ってあんなに伸びるであるな。」
さっきは詐欺師にお仕置きしたから、たまにはと思って脳筋にもついでに
お仕置きをした。やはり躾けは必要だな。
さて、どんな物がいいか……といっても大体決まってるがな。
「店主、棍棒のようなものはないか?」
「棍棒?あんなもん小柄な兄ちゃんには扱えないぜ?」
今、武器の心得を覚えている中で殺しにくいような攻撃ができるのが
【鈍器の心得】だけだからな。
この世界の剣なんて両刃だから峰打ちも無理だし。
「見るだけ見せてくれ。」
「構わんが、使えないからって文句言うんじゃねぇぞ。」
そう言って店の奥に引っ込んだ。
「棍棒ですか?」
「ああ。」
喋れてるって事は詐欺師に治してもらったか。
「そういうのは身体がデカイ種族が使うんだけどね。ちょうど、さっきの
ケンカしてたヤツらみたいな。」
確かにこのスキルを覚えたのもオークからだったか。
そうして店主が持ってきたのは、1mくらいはある木の棒だった。
棒と言っても太さは俺の胴体より太い。持つところこそ細くなっているが、
それでも両手を使ってもまだ余るくらいだ。
「それでも小さい方だ。分かったろ?兄ちゃんじゃ無理……」
まぁ握力が強ければ指が木に食い込むから、ちゃんと持てなくても平気だがな。
そうして片手で握り、軽く素振りをする。
ビュオ!ビュオ!!
風切り音が聞こえる。問題なく振れるし、これでいいか。
「コレくれ。」
「……毎度。」
俺の武器は決まったので次は脳筋の武器かと思ったら、三人がむくれてる。
「も~……」
「あんたねぇ……」
「チュカァはまったく……」
お前らが武器を買えって言ったんだろ。
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