第79話 海賊船
「さて、どうするか。」
「このまま進んだらいいんじゃないですか?」
脳筋がよく状況をわかってない。
「お前なぁ……」
「何か悪い事言いました?」
ふくれっ面になる脳筋。
「海賊だって人間なんですから話をすれば、きっと分かってくれますよ!」
考えて物を言って欲しい。
「いいか?確かに俺たちがあの船に乗り込めれば勝ちだ。
説得もできるかもしれん。だがアレを見ろ。」
俺は船の側面を指差す。
「あの大砲で撃たれたらどうする?」
「あ。」
あ、じゃない。
「命中率は低いだろうが万が一という事もある。それとサーシャ、泳げるか?」
「泳げないである。」
海を初めて見た、という時点で察しは付いていたがな。
「下手したら脳筋とサーシャが溺れ死ぬぞ?」
「う~……どうしましょう。」
だから、それを考えるんだよ。
? セイレーンがひそひそ話をしてる。
「おい、どうした?」
「んっふっふ~、ねぇあんた達ってアレに見つかったらマズイの?」
「おい、まさか……」
「じゃあ連れてってあげる~!!」
急に船が進みだす!
「おい、このクソ魚!」
縄を引っ張ったが……感触が無い、どうやって抜けやがった!?
「無駄だよ~、その小船は私達が魔法で操ってるからね~。」
このままだと海賊に見つかる上にそのまま突っ込むぞ!
「どうするである!!」
「仕方ない!詐欺師は空高く飛んで、見つからないようにしておけ!」
俺はサーシャと脳筋を抱えて海に飛び込んだ。
「ぷはっ!」
「けほっけほっ!」
二人を抱えながら泳ぐのは、今の能力値でもキツイので浮いているだけだ。
尋常じゃないスピードで進んだ船は、海賊船にぶち当たって壊れた。
「うわ~……あのまま乗っていたらエライ目に遭ってましたね……」
「今も十分、エライ目に遭ってるである。」
海賊船が騒がしくなり、大量の明かりで海上が照らされる。
その内、俺達も見つかり小船が出された。
「で?兄ちゃんたちはどうしてこんな事をしてくれたんだ?」
海に浮かんでた俺達は小船に拾い上げられ、海賊船に連れてこられた。
外見こそ汚いものの、中は整理整頓されていた。
そして今、目の前で質問してきている大男は船長らしい。
「あ、あのですね?私達は怪しい者じゃなくてですね。」
「怪しいヤツが自分を怪しいとは言わんよな。」
だろうな。
「えっとですね……つまりその、漁を中止して欲しいというか……」
何で急に説明下手になってんだコイツは。
「落ち着いて一から話しちゃくれんかね?」
「あ、はい。」
海賊に諭された。
「つまり、セイレーン達がこの船にいる人間を狙ってると……そういう事か?」
「そうです。」
それだけの説明に十分ほどかかったんだが……
「で?」
「へ?いや、ですからこの付近での漁を止めて遠くに行った方がいいと
思うんですが。」
「海の男がたったそれだけで尻尾巻いたってなった日にゃあ、後ろ指さされて
生きる事になる。そんな人生歩むくらいなら死んだ方がマシだな。」
「い、命がかかってるんですよ!?」
「海に生きると決めた以上は覚悟の上だわな。」
船長はそう言うと、他の船員を呼んだ。
「忠告ありがとうよ。だが船をぶつけてくれた礼もしなきゃ面子が丸つぶれでな。
おとなしく捕まっといてくれや。」
そうして武器と防水対策をしていた道具を取り上げられた後、
三人とも頑丈な鉄の扉が付いた船室に入れられる事になった。
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