第64話 新たな敵

「ああ、腹が立つ!真っ先に君を始末した方が良さそうですね。」

そう言って、サーシャに見るサベル。

「隠れて!」

「我、尊き神に願い奉る。炎を生みて「遅いですよ?」」

いつの間にか手に握られていた弓で矢を放っていた。


ミキッ!


「脆いな。」

「馬鹿な!?この矢は竜の牙で作られた物ですよ!

それを受け止めるだけでもおかしいのに、へし折った!?」

柔らかかったぞ?


「勇者殿……」

「驚きを通り越して呆れるわね……」

「助けてくれてありがとうである。でも非常識であるな。」

後で三人ともお仕置きが必要か?


「計画が台無しです!このままでは   が復活できないじゃないですか!!」

今の……

「誰が復活できないって?」

「!! ……私とした事が、冷静さを欠いてしまいましたね。仕方ありません。

今日はこれで失礼しますよ。」

そう言った瞬間、

「逃がしはしない。」

俺はヤツの目の前に飛び出ていた。


「なっ!」

ヒュン!カッ!

そのまま斬るつもりだったが、サベルの体が引っ張られるように勢いよく

後退していた。

剣は仮面をかすり、傷を入れる。

その時に少しだけ顔が見え、俺はそのまま落ちていった。



「勇者殿!」

「あの馬鹿!」

「どうするである!?」

三人が次哉の心配をしていた時、

「危なかったな。」

「エーディ……助かりました。」

敵がもう一人現れた。


「あんた達!一体何が目的なのよ!」

もう一人は騎士の格好をして兜まで被っているので、顔も分からない。

サベル同様、宙に浮いている。


「目的……人間どもを絶望させる事だよ。」

「そんな理由で街を襲ったであるか!?」

「私達にとっては重要な事だ。」

それだけ言うと、さらに空高く舞い上がりイオネ王国側に去っていった。



俺は無事に着地した。怪我も特にない。しかし、

「あの顔は……それに名前……」

アイツの顔はいつか夢で見た魔法使いに似ていた。

そこに気を取られたせいで魔法の追撃もできなかった。

それに誰かの名前。

復活できないのは誰かを口にした時だけ何も音がしなくなった。

「あの夢と一緒か……そんな事がありうるのか?」


しばらく考え込んでいた俺のところに三人が走ってきた。

「勇者殿!……大丈夫そうですね……」

「ホントに体どうなってんのよ……」

「トゥクアは人間であるか?」

俺を見たとたん、呆れたような空気になった。

何だよ。文句あるか?


「なぁ?さっきサベルは誰が復活できないって言ってたか聞こえたか?」

「え?……何て言ってましたっけ?」

「聞いたはずなんだけどなぁ……」

「思い出せないである。」

俺以外のヤツにも聞こえてなかったのか……何か意味があるのか?


考える事はあったが、とりあえず街の中の様子を見に行った。

「酷いわね……」

家や店は壊され、国境を分断する壁も崩れていた。

「襲われたヤツらを見に行くぞ。」

「行くである。」

負傷者は一箇所に集められていたが、百人はいただろうか。


戦っている時には見えなかったが、この街の国境警備をしている兵士もいた。

国境を塞ぐ扉が壊されると国を跨いで侵入されるため、付近の敵の撃退と住民の

避難誘導に当たっていたらしい。

「水よ。深き生命の源よ。傷付き倒れた者の清らかな魂を

癒したまえ。キュア!」

全員に回復魔法をかける。

「おぉ!」「傷が……」「治ってる!」

これでよし。


「あんたら凄いな!これだけ負傷者がいて死人が出なかったのは奇跡だよ!」

話かけてきたのは宿屋の主人だった。

「いや、国境警備のヤツらが動いたからじゃないのか?

俺達が動くのは遅かったからな。それに、サハギン自体もそこまで

強くなかったのが幸いだった。」


実際に最初からトレントが攻めてきてたら、冗談では済まなかったろうな。

サベルが間抜けで助かった。

が、また逃がしてしまったからな。

次こそは……

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