第54話 願い事
「おはよ……ってずいぶん顔色悪いわね。」
脳筋と詐欺師の部屋に入るなり、詐欺師に言われた。
「気にするな、寝覚めが悪かっただけだ。それより脳筋は?」
「ぐっすり寝てるわ。で、昨日の事について説明してくれるんでしょ?」
そう言ってきた詐欺師に【泉の契約】の説明をした。
「あの泉って、そんな危険な場所だったの!?」
「みたいだな。お前はどうなんだ?」
「何がよ?」
「お前も願い事してたろ。体調がおかしくなったりしてないか?」
詐欺師があたふたしてる。
「え?そ、そうね。今のところ何もないし、だ、大丈夫よ!!」
「……本当か?」
「本当よ!」
ステータスを確認するが、特に問題はなかった。
「何かあれば、すぐに言えよ。」
「分かったわ。」
脳筋は目覚める様子がないので、別で部屋を取ったエーレを誘って飯に
行く事にした。
「全員で来てしまって良かったのでしょうか?」
「構わないだろ。それに騒がしいと、おちおち眠ってられないだろうしな。」
「んふ~、か~わ~い~い~。いつもそうならいいのに~。」
頭を肘で小突かれた。
「アギャアアァァァ!千切れる~!!」
手と足を持って引っ張たり、緩めたりを繰り返す。
「コレ、拷問じゃない!ムギョオォォ!」
「いや、身長を伸ばしてやろうと思ってな?」
「私は今のまんまでいいわよ!ウビャアアァァ!」
相変わらず変な叫び声だ。
「の、伸びるどころか分離するかと思った……」
「だ、大丈夫ですか?」
「チッ……」
「今、舌打ちしたわね!?」
見た目よりは頑丈だったみたいだ。
「そういや、お前は何であそこに来たんだ?」
「急に話題変えるんだから、まったく……何の話よ?」
「昨日の夜、俺と詐欺師のところに来たろ?」
「あぁ、その事?っていうか、二人を探しても見つからないし、
村から離れた場所の木が凄い勢いで倒れていくんだから、
なんかあったって思うでしょ、普通。」
脳筋が木を切り倒してたのが目印になったのか。
「私も聞きたいんだけど、結局アリアが元に戻った理由は?
アンタが剣で刺しただけでしょ?」
「脳筋の願いを聞いてたからな。」
”私は、誰かを守れるくらい強くなれますようにです。”
「だから、お前に脳筋の後ろに行くように言って剣を刺した。運がよければ
スキルが脳筋の身体があったから、詐欺師が死ななかった。
つまり、命がけで守ったって錯覚してくれると思ってな。」
「……スキルってのは知らないけど、一歩間違えたら私が串刺しだったわよね。」
「大丈夫だ、死んでないだろ?」
「……元に戻るって分かってたの?」
「いや、勘だ。」
詐欺師が耳元に近寄ってきた。
「この馬鹿ー!!!!」
「うるさかった……」
詐欺師は怒鳴った後、どこかへ行ってしまった。
「命の危険があった訳ですし、仕方ないかと思いますよ?」
「そんなもんか。」
しょうがないので二人で飯を食いに行く。
食堂に行くが、昨日の事もあって店員の目が鋭い。
気にする必要もないので飯を頼み、ついでに泉の事も聞く。
「アンタら、あそこに行ったのか!?」
「ああ。不味かったのか?」
「あの泉はなんと言うか……確かに願いを叶えるが勘違いするというか……」
勘違い?
聞くと、願いをかけると変な形で叶えられるという。
ある時、男が腹いっぱい飯を食いたいと願うと急死した。
原因は腹の中いっぱいに食材が詰まって、内臓やらすべて潰れていたそうだ。
またある時は、二人の男女がずっと一緒にいられるようにと願うと体が光り、
二人は融合してキメラみたいになったという。
「あんなところ、通常行くヤツはいないから放っておいたんだが……」
とんだ欠陥がありやがった。
今度、魔法で蒸発させておくか?
「アリア?お~い。」
「ん~……」
リュリュが頬を叩くが、アリアは起きない。
「いくらなんでも寝過ぎでしょ。にしても、どうしよう……
泉に願った事なんて恥ずかしくて話せないし、私も変になるのかな。
でも、今のところ何も起きてないって事は平気よね?
うん、きっとそうよ。」
リュリュは自分に言い聞かせて、ため息をついた。
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