第51話 追われる身

「お前はそんなキャラじゃないはずだろ?」

「ん~?私はぁ、私ですよぉ。」


何故かは知らんが完全におかしくなっている。

「無駄に声がデカくて、馬鹿っぽくて……そういうのが取り柄だったはずだ。」

「勇者殿……やっぱり、そういう風に思ってたんですね……」

「何?」


アリアは続ける。

「旅を続けてずっと、ずっ~と勇者殿は一人で何でもできてましたねぇ。

この前も、やっとお役に立てると思ったら崖から落とされて

私は何の役にも立てませんでした……」


落ち目を感じてたってことか?

「あれは仕方ないだろう。」

「仕方ないじゃないんです!フフ……でもぉ、ほら私、強くなりましたよ?

これで勇者殿もぉ、リュリュさんも守れますよぉ。試してみますぅ?」


そう言った瞬間、


ザッ!ヒュン!


アリアが懐に飛び込んできた。

同時に身体を捻ると、鼻先数cmの場所にある空気を切り裂きながら剣が

通り抜けた。


「さすがです、やっぱりぃ勇者殿はお強いですねぇ♪」

「悪ふざけは止めろ。」


聞く耳を持っていないのか、次々に攻撃を仕掛けてくる。

"おかしい、コイツこんなに強かったか?"


前見た時より明らかに剣を振るう速度が上がってる。

だが、それでも見切れない程じゃない。

何回目かの攻撃を避ける時に腕をひねり上げ、組み伏せる。


「ン……!もう、乱暴ですねぇ。」

「黙ってろ。」


ステータスを覗く。すると、


アリア・ラスティア Lv99

HP:4999  MP:4999  ATK:255  DEF:255

INT:255  MGR:255  DEX:255  LUC:255

スキル

【剣の心得】【槍の心得】【ATKアップ】【DEFアップ】【気合】

【泉の契約】


【泉の契約】

聖なる泉に願い事をした際、覚える事ができるユニークスキルです。

願いを叶えるために必要なステータスをアップしたり、スキルを覚える事が

できます。

注:願いが叶うことによってスキルが消滅します。


あの泉のせいか!原因は分かったが、ユニークスキル!?

状態異常じゃない以上、解きようがない!

どうするか迷っていると、

「もぅ、いつまでも女の子の上に乗ってたらダメですよぉ?」


アリアが力を入れて動こうとする。

「止めろ、下手に動くと折れるぞ?」

「ア……!カハッ!ん~……」

「おい!」

「アアア゛ア゛ァァ!」


言う事を聞かずに、さらに力を入れ始める。

アリアが叫び声を上げた時、画面表示が変わった。


【限界突破】を覚えた。

ATK:255 → 270


何だと!?

驚きのあまり、緩んだ手からアリアが逃げ出した。


「痛かったじゃないですかぁ。でもぉ、これで私が強くなったって

分かりますよねぇ?」

「……普通じゃないお前が言ってもな。」

「ん~?強かったらぁいいんじゃないですかぁ?アハハハハ!」


笑いながら攻撃を仕掛けてくる。

俺は森の中へ逃げ込んだ。



「待ってくださいよぉ~……」

後ろから追って来てるのが分かる。


このまま、付かず離れずを続けるしかないか。

エーレは袋から出したが、下手に動かずに森へ隠れてろと伝えたし、

村に行ったら最後、どんな事になるやら……

俺を追わせたままにするしかないよな。


「それにしても、必要なスキルを覚える……か。」

俺が自分より強いと判断したから、さらに強くなるためのスキルを覚えたって

事か。

「まったく、厄介だ。」

【泉の契約】を消滅させるには願いを叶える必要があるって書いてたな。


”私は、誰かを守れるくらい強くなれますようにです。”

そう言ってたはずだが、強くなったところで襲ってきたら意味ないだろ。


クソッ!何か手はないか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る