第50話 イラついた夜

宿に戻ってゆっくり眠ろうと思っていた俺は、

「勇者殿!だらしないですよ!」

脳筋に止められた。

最近、忙しかったんだしいいだろ。


「何かする事があるのか?」

「なければ作りましょう!鍛錬とか!」

「面倒くさい。」

大体、今日の夜来るかも知れないヤツらに備えていたいんだ。


「む~……」

頬を膨らますな。

「じゃあ、寝るぞ。」

強制的に話を終わらせて俺は眠りに付いた。



「早めに来るとしたらそろそろか。」

夜、起きて【見識】で辺りを調べてみる。

「まだ、村周辺には来ていないか。少し遠くまで行って調べてみるか。」

俺は宿を抜け出して村の外を調べてみる事にした。


村は暴動があったのが嘘のように静まっている。

きっとどこかの家で今後についてでも話し合ってるんだろう。

ちょうどいい、邪魔はない方がいい。


???「あれは……」



村から少し離れたら反応があった。

数は9、ほぼ間違いないだろう。

気付かれないように近くへ寄っていった。



「もうすぐでミルズ村です。」

「ああ。」

「ん、ん~。」

皮袋がもぞもぞと動く。


「チッ!大人しくしてろ!少し前まで動きすらしなかったくせに。」

「もうすぐ売られるのが分かって怖くなったんだろ。黙って持ち運べ。」

メンバーの一人が愚痴を言うが気持ちは分からなくもない。

「しかし、今回は馬車も荷物も無くなりましたし、料金を上乗せしてもらわないと

割りにありませんね。」

「まったくだ。酷くつ」メキャ!


変な音とともに言葉が途切れた。

「よお。」

その代わりに別の声が聞こえてきた。


こいつは何で生きている?何で俺達が襲われている!?

いや、そんな事より、

「敵襲!」

指示をすると、


ザッ!ザザッ!


全員でアイツを包囲するように移動した。

不意を食らって一人始末されたとはいえ、まだ数ではこちらが有利!

連携が取れないほどじゃない!


「殺せ!」

そう言うと、メンバーが一斉に襲い掛かる。

ヤツは一切、防御しなかった。


【剣の心得】をラーニングしました。

【短剣の心得】をラーニングしました。

【火魔法の心得】をラーニングしました。

【風魔法の心得】をラーニングしました。


「終わりか?」


どうしてヤツは死なない、なんでだ!?

「ば、ばけも……」

言い終わる前に何かをされたらしく、その場に崩れる。

見ると、口が無残にも砕かれていた。


「散れ!」

再度の命令にメンバー全員が別方向に逃げる!


「ハァ、ハァ……あいつ何者なんだ!誰がいる!」

返事がない。

合図をした後の合流場所は決めていたはずだが、どうし「俺じゃ不服か?」


後ろから声が聞こえてきたので、ゆっくり振り返る。

「お前以外は始末し終えたぞ?」



俺の目の前の犬が酷く怯えているのが分かる。

「昨日はやってくれたな。礼代わりだ、半殺しにしてやるよ。」

犬は短剣を構えて、俺に向かってくる。


「うぉぉぉぉぉ!」

ヒュン!


風切り音が鳴った。


「おい……」


犬の頭がゆっくりと体から離れていく。


「こんなところで何してる?」


ビチャ!!


不快な音とともに犬の頭が地面に転がった。


「ア……ハァ、何してるって?」


胴体もやがて崩れ落ちた。その後ろに艶かしくなった言動をする、


「コイツ……今、勇者殿を殺そうとしてましたよねぇ。

だからぁ、私が殺しただけですよぉ?」


アリアが立っていた。

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