第49話 暴動
翌日、
「勇者殿、おはようございます!」
声がデカイ……
無理やり起こされたので仕方なく、顔を洗いに行き飯を食う事にした。
「何か、みんな暗いね。」
「そうですね。」
宿の外に出てみたら、村中の人間の覇気というものが無かった。
「これも村長達のせいかな?」
「多分、そうだろ。」
近くの食堂に入って飯を食っている最中。
「この空気、何とかならんか。飯も不味くなる。」
食堂にいる全員が固まる。
頭をはたかれた。
「アンタ、馬鹿じゃないの!?すいませ~ん、コイツ常識を知らないもんでして。」
「勇者殿……その……」
「なんだ?」
「リュリュさんが、先ほどからピクリともしないのですが……」
「だろうな。」
今、4分12秒
最高記録更新中だ。
「し、死ぬ……空気を、私に空気をぉぉぉ!!」
「大丈夫ですか?」
魔法で回復が必要になる状態でもなかったから大丈夫だろ。
次は5分かな?
「つ、”次は5分かな?”とか、かんが、ゲェッホ!考えてんじゃない
でしょうね……」
「よく分かったな。」
「アンタ、私を殺す気!?」
詐欺師の命が助かったところで、
「で、なんで全員そんなに暗いんだよ。」
黙ったまま、誰も喋らない。
「村長とゲェズのせいか?」
その言葉を聞いた瞬間、村人が騒ぎ出す。
「あ、あんた達、村長の知り合いか!?」
「すまん!気を悪くしたら謝るから村長に言うのだけは!」
アイツら……
「ゲェズは昨日、ぶん殴ったから心配いらんだろ。」
「へ?」「ぶん殴った?」「どういう事?」
また、騒ぎが大きくなる。
「言葉の通りだ。ぶん殴って、懲らしめてやった。しばらくは立ち直れんだろ。」
ざわざわ……
収拾がつかなそうなので早めに飯を食って外に出ることにした。
「あんたねぇ、空気を読みなさいよ本当に。」
「そうですよ。」
詐欺師はともかく、脳筋に言われるのは心外だ。
「いつまでも、あの二人の言いなりになったままっていうのも良くないだろ?」
「それは、そうだけど。」
宿に戻って休んでいたら、外が騒がしい。
村長の家の方だ。
「始まったか。」
「貴様ら、一体何の真似だ!!」
村長の家に村人が押し寄せている。
「うるせぇ!ゲェズを出せ!」「旅人に負けたんだってな!」
「ぬ、アイツのせいか!」
「静かにしてくれ。眠れやしない。」
多分、こうなるとは思っていた。
恐怖政治で支配されたヤツらは、その支配者が弱いって分かると
革命しようとするからな。
「アンタは……ゲェズを倒したって本当なのか?」
「あぁ。」
「ほら見ろ、やっぱりゲェズなんて怖くないんだ!」
騒ぎはどんどん大きくなる。
「だから、五月蝿い。」
威圧しながら言うと周りが静まる。
「村をどうすりゃいいか話し合うのが先だろ。」
「どういう事だ?」
一人が質問してくる。
「今、村長とゲェズを降ろしても今まで周りにやって来た事を考えると
復讐されるんじゃないか?」
「……」
コボルトたちに不安が広がっていくのが分かる。
「だったら、他の方法を考えるしかないだろ。」
「どうすれば……」
「例えば、今の村長はお飾りにしておいて実権は村の代表が決めるとかか。」
「そ、そんな事は許さん!」
村長が吠えた。
「この村は代々、私の家系が村長をして皆を引っ張ってきたのだ!」
「それが無理になったんだろ?」
家の中に無理やり入ってゲェズを引っ張り出す。
「う、うぁ……」
相変わらず縮こまったままだ。
「この状態で他から攻められても戦力にならんだろ。」
「これは、貴様のせいだろう!」
「戦争してる最中こんな状態にならなかっただけ、ありがたいと思え。」
全員を見渡して言う。
「お前らもゲェズに頼ってたところがあるんじゃないのか?
だったら、今後コイツがいなくても村がやっていけるようにするのが先決だろ。」
周りは静まったまま。
とりあえず、やっと眠れるか。
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