第46話 ゲェズ

「で、エーレがどうした?あの奴隷娘め、勝手に逃げ出しおって!

お前らが捕まえてきたのか?だったら金をくれてやる、さっさと引き渡せ。」


矢継ぎ早に喋る村長。

「ちょっ、ちょっと待ってください。そういう事ではなく、

私達はエーレさんの不当な扱いについて訴えに来たんです!」

「不当な扱いだと?」

村長の目が光る。


「そうです。国の規定では奴隷は召使とみなし、それ以上の過酷な労働、

待遇が悪い環境においた場合などは、罪を問われるはずです!」

「それが、何か?」

「今回、息子さんと無理やり結婚させようとしてるみたいじゃないですか!

それのどこが召使の仕事なんですか!!」


全員が耳を塞ぐ。

コイツの感情が高ぶると声がデカくなる癖は何とかならんのか?


「ふん!奴隷なぞ金で動く物に過ぎんだろ。それを国の規定がどうのと…

あんなもん買われるだけでもありがたいんだ!それをどう使おうと

お前らには関係ないだろ!」

「何ですって!」

「今のは、ちょっとカチンと来るわね。痛い目見せたげようかしら?」


一触即発という感じだ。

「ちょっと待て。まず何であの娘に執着する?仮にも権力者の息子で、

戦いも強いと聞くが。他にも女ぐらい、いそうなもんだが?」

「…」

村長が黙った。

「何とか言いなさいよ!!」

「そうです、黙ってたら分からないじゃないですか!」

「えぇい、うるさい!相手がおらんのだからしょうがないだろうが!」


相手がいない?

「何故だ?」

「こっちが知りたいわ!息子はこんなにたくましく育ったのに、

近寄る女はおらず、むしろ結婚を前提に付き合わせようといったら

逃げる、喚く…おまけに自殺しようとする者まで現れる始末!」


三人が息子、ゲェズを見る。

”きっと、コボルトの美的センスに合わせてもキツかったんだろうな…”

”エーレさんの言った意味が分かる気がします。”

”頭もよろしくなさそうだしね。”

全員、心の声で結論を出した。


「どうして、こんなに立派な息子と結婚する相手がおらんのか!」

”見た目ですかね。あとアナタの性格がキツイです。”

”顔でしょ。それに父親の性格が悪いとか最悪よ。”

二人の気持ちが一つになった。

「顔だろ、あとお前の性格がクソだな。嫁イビりが激しそうだ。」

「勇者殿!?」

「ちょっと!」

一回は言うの我慢してやったんだ、感謝して欲しいぐらいだが。


「き、貴様ァ!」

「オデをバカにしたな!許さないど!」

ゲェズが殴りかかってくる。

それを避ける。


ドゴォ!!


拳が当たった地面が抉れた。

「ひっ!」

「そんなバカな!」

脳筋と詐欺師が困惑している。

確かに他の種族のヤツらとも渡り合えそうだ。


「ま、またバカって言ったな!」

そういう意味で言ったんじゃないと思うが。

「潰れろぉ!」

やたらめったら拳を振り回してくる。

「おい。」


ガスッ!

後ろから蹴りをかました。

「ンギィ!痛いど!」


「こっちだこっち。」

ゲェズを挑発する。

「フー!フー!もう許さないど!」

俺を殴ってくるが、片手で受け止める。


ビシィッ!


足元の地面に亀裂が入る。

上からの振り下ろしだから質量差で負けなくて良かった。

「嘘だ!オデのパンチを受けて無事なヤツはいなかったど!」




「アリア、まぁたアイツとんでもない事やってんだけど…」


ドクン…


「アリア?」

「え?何でしょう?」

「何でしょう?じゃないわよ。ほらアレ。」

見ると、勇者殿が明らかに質量の違うはずの攻撃を片手でいなしてる。


「いくら何でも、むちゃくちゃじゃないかしら。」

「…まぁ、勇者殿ですし。」

今のは?




さて、もう終わりでいいか。

ボディブローを食らわせる。


「ブヴェェェ!」

腹を押さえてうずくまる。

「ゲェズ!」

村長が慌てて駆け寄る。

「夜も遅いし、家の中で話すか。」


そう言ってゲェズと村長を家の中へ促した。

恐れをなしたのか、素直に言う事を聞いて家に入っていく。

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