第44話 森を抜けよう

「ツジャ~!アリア~!」

詐欺師が叫びながら探し回ってるらしい。

「こっちだ!」

叫び返すとすぐに飛んできた。


「よかった~、無事だったのね!」

「何とかな。ここはどこら辺か分かるか?」

「結構流されたみたいだからね。ちょっと分からない。」

「そうか…」

ミルズ村に戻れば、さっきのヤツらがいるだろうから

とりあえず、目的地は変わらずか。


馬車ごと落ちたから荷物もあるだろうと、しばらく待っていると

流れてきたので拾いながら中身を確認する。

せっかく買った紙やボールペンが水に濡れたり、落ちた時の衝撃で

使えなくなっていたり、食料がダメになっていた。

他にもいろいろだ。


「そっちはどうだ?」

「私の持ち物もダメになっているヤツが多いですね。地図もあったんですが、

破れてしまっています。」

今、どこにいるかが分からないままか。


「空を飛んで見てきてみようか?」

「頼めるか?」

「ちょっと待ってて。」

そういうと詐欺師は空高く飛んでいった。


「勇者殿…」

「どうした?」

深刻な顔をして脳筋が話しかけてくる。


「あの…すいませんでした!」

「何が?」

「私は勇者殿をお守りしなければいけない立場なのに、助けてもらってばかり…

今回も死んでしまう可能性だってあったのに…!」


そんな事か。

「気にするな。」

「でも!」

「俺は簡単には死なない。それに、お前が死んだら寝覚めが悪い。」

「勇者殿…」

脳筋はそれっきり黙って喋らなくなった。


しばらくすると、詐欺師が戻ってきた。

「大体分かったよ。でも、結構離れてるね。」

「しょうがない。そっちに向かって歩くか。行くぞ。」

「…はい。」


岸から近くの森の中に入っていった。

夜だからどうとか言ってられる状況でもないしな。

しかし、

「…」

脳筋のテンションは低いままだ。


「ねぇ…アリアとなんかあったの?」

「特に何も?」

「あんな落ち込んでるの見たこと無いわよ。」

責任を感じているのか。


「おい。」

「…なんでしょう?」

「…まぁ何だ、その、俺はあまり他人といる事に慣れてなくてな。」

「「?」」


急に俺が話し始めたが、二人は耳を傾ける。

「たった数日いるだけ、というか数日しか経ってない感じが全然しないんだが…

アレだ、この三人でいるのも悪くないと…感じてるというか…

上手くいえないんだが、まぁお前が無事でよかった。今はそれだけでいいだろ。」


「勇者殿…」

「おんやぁ~?急にそんな可愛らしい事、言っちゃって~どうしたのかなぁ~?」


詐欺師が頭をペチペチ叩いてきた。

そうだ、小袋は残ってたんだった。


「……!…………!」

「勇者殿、もう許してあげたら…」

仕方なく回転を止めて、袋から出してやる。

「う゛ぇ~…吐く、気持ち悪い…」

学習しないお前が悪い。


しばらく森の中を歩いていると泉がある場所に出た。

位置確認をしながら進まないといけないし、少し休むか。

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