第43話 危機一髪

俺達は襲撃してきたヤツらの馬車に乗ってミルズ村へ向かっている最中だ。

最初から連れてきた馬は、並走させている。


「…ねぇ。」

「何だ?」

「…居心地悪いんだけど。」

「私もです…」

「すいません、私のためにこんな…」

「いや、アンタのせいじゃないけどね。」


馬車といっても豪華なものではなく、馬にでっかい荷台が付いたようなもので

襲撃者と一緒に乗っている状態になっている。

「じゃあ、何人か外に放り出すか。」


そう言った瞬間、少しビクッと動いた。

「やめなさい、可哀想でしょ。」

「そうですよ、いくらなんでも酷過ぎます。」

じゃあ文句言うなよ。

少し話しをし、昼休憩などを取りつつ乗っていたが、日が暮れてきてしまった。

ミルズ村はまだ見えてこない。


「なぁ、馬車って速いんじゃないのか?」

「えぇ、まぁ徒歩よりは多少。でも長旅だとあまり変わらない程度ですね。」

「そんなもんなのか、知らんかった。」

馬車なら速く着くと思って乗ったんだがな。

「でも、速めに走らせてるみたいですし、明日の夜には

着くんじゃないでしょうか?」


夜になる前にどこかに野宿できるところを探すか。

そう思って御者をやっているヤツに止まるよう指示した。

…馬車が止まらない。

「おい…」


そう声を掛けた瞬間、御者台から飛び降りていった。

「何!?」

「フハハ!バカめ、貴様ら全員死ねぇ!」

リーダーとその仲間も荷台から飛び降りる。


飛び降りたのを見たときには体が浮遊感に襲われていた。

チッ!崖か!

「キャアアアアァアァァァァァ!」

「た、助けて!」

詐欺師の方を見ると、服と羽が土で荷台と一体化されている。

落ちてる最中に魔法を使われたらしい。

脳筋と詐欺師だけ!?

崖の上に目をやると、糸のようなものが巻き付いたエーレの姿が…

「あの野郎!!!」


犬だと思って手加減してれば調子に乗りやがって!

詐欺師の周りの板ごと剥がして、脳筋に叫ぶ。

「捕まれ!」

脳筋と詐欺師を抱きかかえ、俺が下になるようにして落ちる。


バシャアアアァァァァァン!


「フン、この高さから落ちて無事ではいられまい。」

「ん~!ん~!」

「貴様のせいで恥をかかされた。本来なら殺すところだが、

依頼品に傷を付ける訳にもいかんからな。さっさと行くぞ。」


襲撃者は遠く去っていった。



ザアアアァァァァ

水に落ちて助かったのはいいが、川の音が大きくなっていく。

「プハァ!た、助かっ…ちょ、前!前!」

「滝!?」

詐欺師は水に落ちて、土が取れたみたいなので空に逃げる。が、

「もう一度、落ちるぞ!」

「嫌ァァァァァァ!」


俺と脳筋は滝に落ちていった。

滝つぼに落ちた時、手が離れたらしい。

脳筋を一瞬、見失ってしまった。

ヤバイ!あいつは鎧を着ていたから泳げるはずがない!どこだ!


必死で探すと下の方に沈んでいくのが見えた。

泳いで何とか追いつくと、岸まで引っ張っていった。


「ブハッ!…おい大丈夫か!」


返事がない、冗談だろ!?


「おい、しっかりしろ!おい!」


息が止まっている!

心臓マッサージ!?鎧着てるし、それを壊すほどの力でやったら

心臓が破裂しかねん!

くそっ!こうなったら!


息を吸い込む。

口を付けて息を相手に送り込む。

人工呼吸だ。


数回繰り返した時、

「ゲボッ!ウェッ!オエッ!」

水を吐き出した。

「大丈夫か、アリア!」

「ゲホッ…ハァハァ…?ここは?…あぁ滝から落ちて…」


意識も取り戻した。もう大丈夫だ。

「初めて名前で呼んでくれましたね。」

「こんな時に何言ってる。」



次に会ったらアイツらを半殺しにする事を心に決めつつ、

これからどうするか考える。

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