第38話 エジオでの買い物

次の日、ワミに詳細を聞いてみた。

「まず、術者について。結局捕まえる事はできませんでした。」

「操られた団員に話は?」

「聴取を行いましたが、操られた前後含めて記憶がハッキリしないとの事で

参考になるような事は何も。」


サベルか…

イラッとしたからな、次は捕まえる。


「次に先ほどの話にも出ている、操られた団員と竜についてですが、

特に身体に不調を訴えている事はないようです。

ただ、呪いをかける片棒を担がされた事にショックを受けていまして…」

「まぁしょうがないだろうな。」


人も竜も自分のせいで死んでしまうところだったんだ。


「最後に呪いをかけられた竜ですが、今は元気そのものといったところです。

幼竜ということで一応は様子を見てはいますが、明日にでも空を

飛べるでしょう。」

「それは良かったです!」

「とりあえずお伝えできる事は以上です。

現状、何も分かっていないという事になります…お恥ずかしい限りで。」

「いや、構わない。」


ワミからの報告を聞いて、どうするか考える。

と、言ってももうできる事はない。

「クアーズ王国に入るにはどうすればいい?」

「それでしたら手続きを済ませてすぐにでも。」


ここは任せて旅の続きをしようか。

「せっかくですので、手続きが終わるまで商店でも見て回ってはいかがですか?

すぐにでも済むとは思いますが。」

朝食もまだだし、そうするか。



「いろんな物がありますね。」

「何アレ、美味しいのかな?」

脳筋と詐欺師がはしゃぐ。


「らっしゃい。ウチの串焼きどうだい?」「果物安いよ!」

「鮮魚ならこの店で!」


昨日までは規制が入り、ドタバタしてたせいで物を売れなかったらしく、

今日はその分も取り戻してやろうといつもより張り切っているらしい。

商魂たくましい事だ。


「勇者殿、これ美味しいですよ。」

「この芋のお菓子、甘くていいわね。」


二人は食い物に夢中になってるが、俺はそれよりも他に気になる事があった。

それは…


「なんだい兄ちゃん?人の顔をそんなにジロジロ見て。」

「いや、すまん。気に障ったら謝る。」


獣人を初めて見たからだ。

「まぁオレはリザードマンの中でも一番の美形だからな。

ついでに懐もデカいから注文してったら許してやるぜ。」

「抜け目ないな。」


その店は立ち食い屋らしく、せっかくなので何か注文することにした。


「じゃあ、この肉串をパンで挟んだヤツをくれ。」

「あいよ。」

持ちやすいように紙に包んでくれている。

「エッカ焼きお待ち!」


初めて食べたが美味いな。

肉とタレの味が濃くて腹に溜まっていく。

朝食にしては重いが腹も減っていたしちょうどいい。


「ここでは結構、長く商売してるのか?」

「まぁね。」

「じゃあクアーズ王国で変わった噂とか聞かないか?」

リザードマンは考える。が、

「いや、特にこれと言ってないな。観光かい?」

「そんなところだ。」


後はさっさと食い終わったので支払いをする。

「いくらだ?」

「4銀貨と10銅貨だね。」


5銀貨渡して、

「釣りはいらない。」

そう言って立ち去ろうとしたが、


「待ちな兄ちゃん。商売人が何もしないで金を受け取ったら名折れだ。」

もう一度、先ほどより深く考えているらしい。

「変な噂じゃなくて伝説みたいなもんなら知ってるんだが…」

「どんな?」

「エジオを出て5日くらい歩いた場所にミルズ村ってぇのがあるんだが、

村からさらに西に行った森の中に願いを叶えてくれる泉があるってのだ。」


「本当ですか!?」

「それもっと詳しく!!!」

さっきまでいなかったくせに急に話に入ってくるな。


「お連れさんかい?」

「不本意だがな…」

「詳しくっていっても、さっき言った通り伝説みたいなもんだからな。

そのミルズ村に行って聞いたほうが早いぜ。」


興奮する二人を引き剥がして、

「情報助かった。」

「こんなもんでいいのかい?」

「ああ、観光がてら調べてみるさ。」



それから消耗品や食料を買い、手続きが済んだかの確認に向かった。

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