第21話 最初の町
ネアは墓前でしばらく祈っていた。
「この後は次の町に向かうんだったよな。それがヴァディマールだかでいいのか?」
「そうですね。どうせ目的地ですし、この子を送っていきましょう!」
脳筋も俺も軽く祈りを捧げつつ、次の予定を考える。
「ヴァディマールに寄る予定だったんですか?
だったらお礼もしたいので是非、私のお家にいらして下さい。」
ネアが言ってきた。
「ネアちゃん、もういいんですか?」
「はい。それで先ほどの話なんですがいかがでしょう?」
別にデメリットがある訳でもないし、
「そうだな、寄らせてもらおう。」
「本当ですか!?良かったねアドルフ!」
「ワン!」
じゃあ、とりあえず元の道に…
「お前、馬連れてたよな。どうしたんだ?」
「ちゃんと森に入る前に木に手綱を結んできましたよ。」
「魔物とか出たらどうするんだ?」
「…急いで戻りましょう。」
荷物預けないで良かった。
少し早足で戻ると遠目に人影が見えた。
何やら荷物を調べているらしい。
そっと近寄って後ろから「あぁ!泥棒!」…脳筋が叫びやがった。
人影はこちらを見ると、慌てて馬を奪って逃げようとした。
今日はアッチコッチ走り回る日だなチクショウ!
そう考えつつ走り寄り、逃げる男の頭を掴む。
「ギャアアアァァァ!離せ!潰れる!アギィ!」
よく分からない叫び声を上げながら暴れている。
「勇者殿!」
脳筋がネアを背負って森から出てきた。
「こいつはどうする?」
脳筋が当て身を食らわせて気絶させた。
俺がやると分解するかも知れないしな。
「町に着いたら王都に文を飛ばして衛兵に来てもらいましょう。」
「今から行く町にはいない――おい、どうした?」
ネアの顔が青くなって震えている。
「その人は…」
「どうしたの?もしかして知り合いだった?」
「いえ…」
それっきりうつむいて黙ってしまった。
アドルフも、
「グルル…」
と唸るばかり。
変な空気が流れたが、とりあえずは目的地に向かって歩き出した。
ネアは馬の上に元気なさげに乗っている。
盗賊は俺が首根っこを掴んで引きずり、アドルフがその後を追いかけてくる。
脳筋は
「ワタシトオナジモチカタ…ダイジョウブ、ヒキズラレテナイ…マダマシ…」
と盗賊を見ながら、カタコトでブツブツ呟きながら付いてくる。
こいつは考え込むとこうなるのか?怖いから止めて欲しいんだが。
途中で盗賊が目を覚まして騒がしくなり、いい加減うっとうしくなった俺が
デコピンして吹っ飛ばしたりといろいろあったが、ようやく町が見えてきた。
「あ、勇者殿!町です」
見れば分かる。大声を出すな。
そのまま入り口の近くまで来たので入ろうとしたのだが、
「お前ら何やってる!」
急に怒鳴り声が聞こえた。
「え、私たちはその…旅「何て事をしてくれたんだ!」」
状況がよく分からんが、今の騒ぎで人が集まって来た。
そして全員がこちらを見ながら、
「あぁ…おしまいだ…」
「この疫病神が!」
などと口汚く罵ってくる。
そのうちに、
「ネアじゃねぇか?」
いつの間にか馬を降り、俺の後ろにいたネアに誰かが気付いた時。
「静まれ!!!!」
最初のヤツよりもデカイ声で全員に怒鳴った。
見れば歳は30半ば程度の男だった。
「旅の方、騒がしくしてしまい申し訳ありません。」
「おい、町長!」
そう若い男が言うと同時に全員へ、
「初めてこの町を訪れる方に何て態度だ恥を知れ!!」
再度、怒鳴った。
だが、納得はしていないらしく皆グチグチと文句を言いながら
散っていった。
「お父さん…」
「ネア!どうしてこの方々と!?」
どうやら父親だったらしい。
「ここで話をするのは落ち着かないでしょう。どうぞこちらへ。」
そう言って村の奥へ案内された。
嫌な雰囲気だ――
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