第20話 しっかり者の娘

「…お肉はしばらく食べたくないです。」

「私もです…」

案の定、最初に退治していたオークの死体を見た二人は

俺が見つけたときには腰を抜かして吐いていた。

アドルフはワンワンと吠え続けていた。


「ネアはともかく、お前は騎士じゃないのか?魔物の死体くらいで

ギャーギャー騒ぐなよ。」

「限度があります…あれは酷すぎる…」

まぁ確かに。


どうやらぶっ飛ばした後、全身の骨が粉々になったらしい。

その上、木の枝が大量に刺さった挙句、いろいろ飛び出した結果

ホラー映画のゾンビもかくやという物体が出来上がっていた。


「勇者殿はどうやって攻撃して、あんな風になったんですか?」

そうか、コイツは見てないんだったな。

「蹴飛ばした。」

「…勇者殿って非常識極まりないですよね。」


尋常じゃなく腹が立ったので、

「いひゃい、いひゃい!はひをふふんへふか!」

頬をそこそこの力で引っ張る。

「ひゃへひぇ!ひひへふ!ひひへふはは!!!」

思ったより伸びるな、ちょっと面白い。

「はふへへ~!!!!!」



「はぁはぁ…ほんとに千切れるかと思った…」

「安心しろ、治してやる。そしてもう一回やるだけだ。」

「ヒドイ!?」

多少のストレス発散ができたがどうするか?


「あの、ここよりもう少し奥に行きたいんですが。」

しょうがない。

今の現状は二人とも腰を抜かしてる。

だから、

「ふふ…お父さんみたいです。」

「この扱いの差は一体…?」

ネアを片腕に抱きかかえるように抱っこして、脳筋は首元を掴んで

持って歩いている。


「あの、勇者殿?」

「何だ?」

「一応、私も女ですし、その、片方がお姫様抱っこに近い持たれ方を

されていると同じようにされたいな~なんて…」

チンパンジーが何か喋ってる。

尻尾を振りながら黙って付いてくるアドルフを見習え。


とりあえず無視して、しばらく歩くと花畑が見えてきた。

「ここに来たかったんです。」

綺麗と言えば綺麗だが、命の危険を冒してまで来る様な場所でも

無いと思うが、

「あそこの一番大きい木の根元です。」

そこまで連れて行くと大きめの石が置かれていた。


「もう下ろして頂いて大丈夫です。」

ネアをゆっくりと下ろす。


「小さい頃、あ、今よりもですよ?家族でこのお花畑に来た事があるんです。

なんでもお父さんとお母さんが昔、出会った場所なんだそうです。

それで、もしも死んだらここに埋めてくれと…」

これは墓石か。

「多分、その時には覚悟していたんだと思います。お父さんも辛そうな顔を

していましたから。」


「でも、こんな魔物がいる場所に来るのでも一苦労だったんじゃないですか?」

確かに、さっきのオークは一般人が勝てる相手ではなさそうだったが、

「私も驚いています。魔物が活発化しているとは聞いていましたが、

あんな魔物を見るのは今日が初めてでしたから。」

急に出没するようになったのか。

「でも、オークじゃなくても他の魔物もいるんじゃないか?」

「その場合はコレを使っていました。」


肩から掛けていたカバンから小さな光る石を取り出した。

「もしかして魔石ですか?」

「そうです。」

魔石?

「それをどうするんだ?」

「相手に投げつければ、石に込められている魔法が発動します。」


「さっきはどうして使わなかったんですか?」

「恥ずかしい話ですが、アドルフが動けなくなってパニックになってしまって…」

「クゥン…」

アドルフがネアに鼻をこすり付ける。


「もう大丈夫、勇者様が助けてくれたから。

今日はお母さんの命日だったので、どうしても来たかったんです。

もしかしてお母さんが勇者様と合わせてくれたのかもしれませんね。」


しっかりし過ぎているな。こんな子供見たことない。

本当…

「きっとそうです。いい話ですねぇ…ズズッ…」

脳筋にどうにか見習わせられないだろうか?

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