第6話 運命じゃない出会いはきっとない!
その後、惣寄合に行っているはずの備中さんの大声で俺は目を覚ました。
「おおい!貴明!!えらいことになった!」
俺は眠気眼のまま、もしやこの村にはいられないのではないかと思った。
やっぱり……あんな勝手に指揮を執ったりしたから、嫌がられたのだろうか?
「や、やはり……俺はこの村にいられないという事でしょうか?」
「違うわい!それあっさり決まったのじゃが……。例の山賊の対応にはこの村を治める領主様も手を焼いておってな?先日の戦いの話を聞いた領主様が、貴明を一目見たいと……」
「え、何で俺なんかを?」
「そりゃあ、未来かなんかの世界から来て、しまいにゃ頭数少ない農民で以て、山賊を大いに惑わせたんじゃ。放っておく訳にはいかんじゃろうて」
「えええ?!絶対そんなの後から斬られたりしますよ!危険人物扱いでえええ」
「ええい!問答は無用!さ!はよう!もう使者がお見えだ!」
俺は行くけども、景ちゃんも一緒にとお願いした。
もしも何かあったら守ってもらおう……。我ながらにして情けない。
景ちゃんは大げさだよ、と笑ってくれたけども俺にとっては本当に死活問題だった。
歩いて約二十分くらいだろうか、額に少し汗がにじんで来た。
もはや、正確な時間の感覚などはない。この足と体力の感覚だけで物事を計っている状態だ。
この大通りは、やがて鎌倉時代に作られた
それからはずっといけば京の、都に行けるようになっている。ここ辺りの農民は昔は、この正規ルートを通って税を民部省へと運び込んで行ったそうだ。
そんな話をしていると、国増神社よりはやや小さいが門構えのしっかりしている寺に連れてこられた。
門には青覚寺と書いてあった。
「備中さん……ここは?」
「
「ああ、あそこのお城の?」
「そうじゃ」
「しかし、そこの人の使者なんて……おなかが痛くなる」
「さあ、男なのだからその様な弱気ではいかん、景もここで待ってれば良い。中へは、わしらだけで行く」
この時の備中さんの目はどこか座っている様な、覚悟を決めた顔をしていた。
つまり、もしも万が一のことがあれば景ちゃんは逃げ出せる様にという配慮なのだろう。
そう考えると、いよいよ自分の置かれた状況に不安になっていくのだった。
中へ入ると、待ち構えていた坊主がいた。彼に大きな堂のような場所へ案内をされた。
庭園はいかにも古風と言った感じで、靴ならぬ草鞋を脱いで、所謂金堂の様な雰囲気を漂わせている。
そこから廊下をだむだむと音を立てて突き抜けて、左側へ曲がる。
左手には、紫や青の花が首をかしげてこちらを見ていた。花は気ままなものであるが、いつの時代もその様相を変えていないのだろう。そう考えると、少し不安だった気持ちが薄らいでいくのであった。
その突き当りの傍に、襖がある。就学旅行で見たよ様な、絵が描いてあるようなものではないが、白地に取っ手は黒色の円形で威圧感を放っていた。
そこを坊主が開くと、中には二人の武者がいた。
鎧こそは身にまとってはいないが、厳かな目つきと羽織をしている。これが束帯なのだろうか、いや時代的には何なのだろうか……
「お主か」
その内の細い方がこちらを見て言い放った。
「あ、はい」
この気の抜けた返事は俺。いや、ものほんを見てしまったら何も言えない。それと一緒の事だね!
「それがしは、おだ家、
「え……、おだ?」
しまった。織田なのか小田なのかわからない……。
この地元は昔はどの殿さまが治めていたのかわからない……。正確には、そんな大名がうちの地元を支配していたのか……?何か、
「おだです。何かありますか」
「えっとですね、その……お父様はなんと仰るのでしょう……。父上と言いますか」
「
「あ!なら!信長さんの方だ」
「無礼な!」
と、いきり立っているのは、やや太い方で身長はかなり大きいし、髭はあごもだがもみあげにまで掛かっている大男だ。これを猛将とでもいうのか……!
「あ、その……呼び捨てにしたとか、失礼な言い方をしたとかではなく!あれです!わたくし、未来から来たのです!フーチャーです!発音良くないっすかね、では……」
「亡くなったのじゃ」
「え?」
「ノブナガと言うものは死んでおる」
「え?いや、うそですやん。1582年に死んだ人が1558年に死ぬわけないでしょ?」
「は?何を言っている」
「そうじゃ、浅野殿の言う通り」
「若いの……お主、未来から来たのでは……?」
備中さんもこの表情。
ここでまさかの予感がよぎる……
ここ、過去じゃなくて……。それとはまた違う世界なんじゃないか!
だとしたら、この知識も役に立たない!
ぐあああああ!!
どうしたら良いんだああああ!
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