二章-過程-

 -遡ること13年前。


 「ねえ父さん?」

 「どうした祥吾?」

 「どうして日本は戦争してるの?」

 「悪い人たちを倒すためだよ。いいかい祥吾。アメリカやヨーロッパは悪い奴らだぞ!」

 「う、うん。」

 この祥吾と呼ばれる人物こそ「ナンバー26」、彼の本名だ。外木場祥吾。それがフルネームである。この時まだ5歳である。

 「おっと父さんはちょっと見回りがあるんだ。じゃあ行ってくるね。」

 「うん!行ってらっしゃい!」

 (う~ん。見回りって何するのかな?付いて行ってみよう!)






  30分後……

 (す、すごい歩いたけど…まだバレてないかな?)


 着いたのはやや入り組んでいる裏路地。祥吾はその前に居た。そして…


 (あ、隣の家のおじさんとかいる。囲んでるのは外国人かなあ?なにするのかなあ。)


      「この!貴様ら!アメ公が!」「戦争国の相手には何したっていいんだよなあ!?」


  ガシイ!ゲシ!バキ!

 彼らが殴るたびに鮮血が散る……当然血を流してるのはアメリカ人だ。


      「stop!sorry!oh……」

 「や、やめてください!彼は私の夫!」

 「うるさい!お前も敵国の人間と結婚してるということはお前も敵だ!おらああ!」

 「きゃあああああああああ!」

 (……え?こ、これが見回り…だったの?ただ、いっぱい殴ってるだけ……)


 そう、彼らは一方的に虐待していたのである。無抵抗な人間を。


  「はあ…はあ…死ねえ!」


 ベギイ!骨を砕く生々しい音が周囲に響く。おそらく、アメリカ人は絶命したであろう。


  「お前も死ね!」


 ベギイ!さっきと同じ音が響く。彼女も絶命したであろう。

 彼らは極度に外国人に追い詰められていた。しかし、それが更なる人間の凶暴性を引き出してしまったのだろう。そんな彼らを見て、怯えないはずがない。まだ5歳の祥吾が。


 「ああ…あ…」

 「誰だあ!」


 祥吾の父は気づいた。


 「しょ、祥吾…お前、まさか…」

 「うわあああああああああああああああ!」

 「待て!祥吾!」


 祥吾は逃げた。なぜ逃げたのかはわからない。怖くなったのか、目の前の現実を受け止めれなかったのか、どうなのかはわからない。祥吾はとにかく逃げた。




 それくらい経っただろうか。ひたすらに走った祥吾はある女性と出会った。見目麗しく、下手に化粧もしてない。一般的に美人とされる女性だった。


 「おや、そんなに息があがって…どうしたんだ君。」

 「……………」

 「ちょっと失礼。」

 その女性は祥吾のでこに、自分のデコを合わせた。

 「なるほど、君の父親がアメリカ人を虐待していたんだね?」

 「!なんで…?」

 「内緒。でも、君はこうして逃げ出してきたわけだけど、行くところはあるのかい?」

 「…………」

 「……………うん。分かった。2つの選択肢を出すよ?」

 「え………?」

 「そのまま家族のところへ戻るのか。それとも、私についてくるか。………選んで。」

 「………………」

 (……まだ幼子には早かったかな?流石に……)

 「………出ていきます。僕、お姉さんに着いて行きます。」

 「………良いんだね?どっちにしろ、厳しいんだよ?」

 「大丈夫です……」

 「うん、分かった。じゃあ、ついてきて。」

 「はい!」




 「……俺はあの選択を悔いてはない。正しかったと感じてる。だから俺は……」


 何かを言おうとしたが言葉が出てこない。だが、俺にとっては出てこないほうがありがたい。後悔するなんてことは決して無いからだ。そう思いながら俺は司令本部の建物の前に立っている

 ふと疑問に感じた。そういえばなぜ俺は司令に呼ばれたんだ?正直、そのまま戦ってるほうが良い気がするんだがな……考えても仕方ないか。そもそも、ここの司令官には会ったこともない。俺は基本フリーの兵士だから今までも他の戦場で指令が来たことはなかった。そう考えるとなおさら不思議だな…

 そう思いながら俺は司令本部の建物前に立つ。そして…歩みを再開させる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る