見えざる敵の戦場

@kurosakireiji

序章-葛藤・そして、出会い-

序章-回帰-

 俺はなぜこの場にいるのであろう。鉄臭い血の匂いが鼻につく。俺はなぜ銃を持っているのであろう。銃声が騒音のように鳴り響く。俺はなぜ亡き者の追悼をしたのだろう。前へと進む兵士たちは死んでゆく。

 きっと、そこに答えなど無いのだろう。なぜならここは”戦場”であるからだ。


  「そろそろ行くか…」


 そう呟き、戦闘態勢を整える。そして…前線へと走りだす。

 危険ではあろうがどのみちやらなきゃどうしようもない。敵を殺してなんぼの戦場だ。

 ヒュン ヒュン


  「敵も本気か!」


 だが、その気ならばただ撃ち返すのみ!  

  バババババババババババババ 


  「フン!」


 1マガジン分を撃ち切った。その間にあることを結構感じた。敵を殺めたのだと。だが、不思議と何も思うことはない。ただ敵を殺す機械マシンでしか無い。俺という存在はそれでしか無い。敵を殺し、勝ち進む。それが俺に与えられたものだ。そして、このM14ライフルがそれをさせる。


  「敵の攻撃が激しいな…隠れよう。」


 一度退却し岩のところへ隠れる。ここなら味方もいるし安全ではある。


  「おい、あんた。ナンバー26(トゥエンティーシックス)だよな?」


 声をかけられた。慣れ合いならゴメンだが…コードナンバーで呼ばれたということは連絡だろう。


  「何だ?」

  「司令官からだ。一度戦線から離脱して司令本部まで戻れとのことだ。あんた…東洋人だったか。」

  「…ああ。珍しいか?」

  「当然だ、敵にいるはずの東洋人が味方なんてな。それともあんた、こっち生まれか?」

  「れっきとした日本生まれで日本育ちさ。で、他に何かあるのか?」

  「いや…噂には聞いてたがドライなやつだな。」


 そこまで有名になったつもりはなかったのだが、どこかで小耳に挟んだんだろう。だがドライなのは認めている。


  「どっから聞いたかは知らんがここは戦場だ。用がないならさっさと行け。」

  「フン。やはりドライなやつだぜ。…俺はジョン・アンダーソンだ。」

  「言っとくが俺は名乗らねえぜ48(フォーティーエイト)。悪いが行かせてもらうぞ。」

  「…………」


 悪いがこれが俺だ。味方と仲良しこよしなんて悪いが出来ない。それに…俺は東洋人が嫌いだ。だから自分が憎い。敵である東洋人の血を継いでるのだから。

 そんなことより速く戻るか…

 いつからだろう。この戦争が始まって、俺がこっち側についたのは…







 戦争の発端は、アメリカやEU(ヨーロッパ連合)の急激な経済成長。先進国に超が付くほどの成長だった。

そのため、アジアやアフリカ諸国などの国々は「遅れている」という理由で虐げられていた。それに反旗を翻して2030年に戦争を起こしたのが中国や韓国、インドなどといった国々だった。

 最初は確かにアジア諸国は正しかったんじゃないかと思った。だが、俺は彼らを憎む。そして…彼らを憎む理由となった家族をも憎む…


 俺は未だに怨念にとらわれているのだ。

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