第331話: 異世界からの刺客
魔王の前に立ちはだかっていたのは、異世界より来訪せし勇者だった。
先程の動きから、恐らく奴には魔術の類は効かぬのだろう。
名前:相模原 健一
レベル:61
種族:人族
職種:勇者
スキル:双竜斬Lv5、一閃Lv5、三連突きLv5、連撃斬Lv8、
称号:異世界の勇者、武人の神の加護
ふむ。やはり勇者で間違いないようだな。
「お前、今俺のステータスを覗いたな?」
同じ
「もう戦いは始まっている」
ナターシャは先手を取り、勇者の懐に入り込みその鋭利に尖った爪を突き刺す。しかし、勇者の姿はそこにはなかった。
スキルにあった
《
ナターシャが使用したのは、自らの五感の強化。主に幻影や錯覚などを無効化する技能だった。
ふむ。右側に二メートル程認識を阻害しているのか。面白い技だな。
つまりは、魔術が効かない訳ではないと言うことか。
急に現れたのも同じ手法だろう。ネタが解ればどうと言うことはない。試してやろう。
瞬時にナターシャの周りに無数の氷の槍が出現する。それを見た勇者は実際の見た目に変わりはないが更に距離を取った。
振り下ろされた矛先は、本来の勇者がいる位置だった。
魔王以外は見当違いの場所を狙ったことに疑問の表情を浮かべていただろうが、焦ったのは他ならぬ勇者本人だった。
「逃しはしないさ」
《
次いで魔王が使ったのは、対象と大地とを縛り付ける魔術だ。
地面についていた両足がまるで接着剤でも付着したかのように固定されてしまった。
迫り来る氷の槍から逃れるべく勇者は焦り踠いていたが、無情にもタイムアップとなった。
氷の槍の雨が勇者へと注がれ、鮮血が宙を舞う。
魔王は一気に畳み掛ける。
《
《
見上げる程の巨大な神像を象ったエネルギーの塊が勇者を襲う。
魔王は自らの魔術とそれによる爆煙で勇者の姿は視認出来なかったが、
流石に勇者と言えど、これをまともに食らえば相応のダメージを与えているだろう。
その時だった。
背筋が凍るような錯覚を覚えた魔王は、その場から転移で後方へと退避する。
その途端に魔王がいた場所が大きく爆ぜる。
「あちゃあ、外しちゃったかぁ」
爆ぜた場所から現れたのは、禍々しいまでの異彩を放つ拳をした少女だった。
何だ、勇者の仲間か?
《
取り敢えず動きを封じておけば問題な────。
背後からの気配を感じ取ったと同時に、全身に凄まじいまでの重圧が襲う。
「大人しくしていて下さい」
何、もう一人、居たのか⋯。
今度は魔術師が愛用しそうな長めのローブを着こなした長髪の男が現れる。
動きを封じる為の術か⋯。なるほど、全く身体に力が入らんな。
「先走ってやられるとは情けないですよケンイチ」
「あー無理無理。返事はないかも。もしかしたら死んじゃったんじゃない?」
少女は呆れたように勇者を指差す。
爆炎により勇者の姿は視認できていなかったが、魔王には既に勇者が事切れていることを感じていた。
「はぁ⋯。全く、だからあれほど慎重に行きなさいと忠告しておいたのに。ただでさえ、我らの中で
面妖な術を使いはしたが、かなりの強者だった事には違いないはず。それをしても最弱ならば、この二人はそれ以上の強者ということか。確認しようにも先程から魔力を全く練れなくなってしまった。私を拘束しているこの黒い影みたいな輩の仕業だろうな。
「まぁでも最低限のことはしたようですし、許すとしましょうか」
魔術師は、魔王と魔城跡を交互に視線を送る。
「ねぇ、ユージ。何かね、さっきっから私の足が動かないんだけど?」
少女は自らの足を掴み引っ張り上げるもまるでびくともしていない様子だった。
「恐らくそれは、そこの魔王の仕業でしょう」
「え、あいつが魔王なの!」
私の正体を知っているのか。人族にはそうは姿を晒していないはずだ。考えられるにこやつも
「
何だと⋯。
全ての魔術の効果を打ち消す超高等魔術を使いこなすだと。
「よっしゃぁ、ありがとユージ! これでこの魔王をぶっ飛ばせるよ」
少女が肩をぶんぶんと回しながら魔王のすぐ目の前まで歩み寄る。
「死ぬまで何発必要かなぁ〜」
異彩を放つその拳は身動きの取れない魔王へと振り下ろされた。
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